気持ちのいい日が続く10月。読書するには最高の季節ですが、どんな本を選べばいいか迷っていませんか。この記事では、10月におすすめの本を7冊ピックアップ。10月ならではの斬新な読書法も合わせて紹介します。ぜひ今の季節にぴったりの本を見つけて、読書の秋を心ゆくまで楽しんでくださいね。
小説から絵本まで。10月におすすめの本7選
まずは、10月におすすめの本を7冊ご紹介。秋の夜長にじっくり読みたいミステリー小説から生きる勇気をもらえる美術小説、幻想的な絵本まで、幅広く取り上げました。
登山で心を整える「山女日記」湊 かなえ
紅葉を見に山へ行きたいこの季節におすすめ!
山を登る7人の女性たちが主人公の連作長編小説。1話目の主人公は、来月30歳になろうとしているデパート店員・律子。同僚の誘いで新潟県の妙高山・火打山に登ることになった律子は、正反対の性格で馬が合わない同期・由美の言動がいちいち気になります。それでも律子が登山を止めない理由、それは恋人との結婚を進めるべきか、旅が終わるまでに決めたかったからで…。
結婚相手への不満、姉への鬱屈した感情、夫との関係など、誰にもいえない思いを抱えた女性たちの心境が丁寧に描かれている作品。読み終える頃にはきっと、大切な人と一緒に山を登りたい、そう思えるようになっているはずです。
ハートフルな喫茶店に涙「コーヒーが冷めないうちに」川口俊和
10月1日はコーヒーの日ということで!コーヒーを片手に読んでみてほしい一冊。
これは不思議な喫茶店で起こった奇跡と、過去に戻ってやり直したいことがある4人の男女のお話。とある街の喫茶店には、「望む通りの過去に戻れる席がある」という都市伝説がありました。ただし、過去に戻れるのは「コーヒーが冷めないうち」という条件付き。更に、過去にこの喫茶店を利用したことがない人には会えず、戻った過去でどんな行動をしたとしても現実が変わることはありません。やたらと面倒なルールにも関わらず、今日もこの喫茶店には過去に戻りたいお客さんが次々訪れて…。
登場人物の心情がリアルに描かれた、心温まる作品。ファンタジーな世界観ながら、設定が妙にリアルなのも面白いポイントです。
フィクションだけどリアルな闇を感じる「東京の子」藤井太洋
10月14日はスポーツの日。1964年に日本で初めて東京オリンピックが開催されたことを記念して制定されたということで、こちらの本をおすすめ!
舞台は、未来の働き方をうたう大学・東京デュアル。東京オリンピックの3年後に設立されたこの大学では、「エリートでなくてもチャンスが得られる」「学びながら働き、手に職をつけられる」として、多くの学生を集めていました。ある日、訳ありの何でも屋として生計を立てている主人公・仮部のもとに、「失踪したベトナム人女性を捜索してほしい」という依頼が。女性の行方を捜すため東京デュアルに足を踏み入れた仮部は、東京デュアルの実態が人身売買なのではと疑い始め…。
外国人労働者や賃金格差など、現在社会の労働問題がテーマの社会派小説です。難しいテーマではありますが、疾走感あふれるアクションシーンもあり、最後まで目が離せない展開。主人公も魅力的で、爽快な読後感を味わえますよ。
美術館に行きたくなる「<あの絵>のまえで」原田マハ
芸術の秋ということでアートがテーマのこちらの本をおすすめ!
6つの絵画に絡めたストーリーが展開する、6編の短編集。1話目の主人公・亜衣は母方の祖母と暮らしながら、小説家になることを夢見ていました。高校を卒業後、亜衣はフリーのライターになるため一人暮らしを始めることに。日々の忙しさから祖母とも疎遠になりますが、ある日突然祖母が亡くなってしまい、後悔と孤独にさいなまれる日々を過ごします。そんな亜衣を救ったのは、隣に住むおせっかいなおばあさん・スガワラさんで…。
傷ついても再び立ち上がる勇気をもらえる、珠玉の美術小説集。著者が紡ぐ言葉が心の奥底に染み込み、自分の気持ちと向き合うことの大切さに気付かされます。
学生の頃に戻ったかと錯覚する「図書室のはこぶね」名取佐和子
学園祭の季節ということでかつての青春を懐かしむきっかけにいかが?
高校の体育祭までの1週間を描いた青春謎解きミステリー。高校3年生の百瀬花音は女子バレー部のエースでしたが、足を怪我してしまい体育祭に参加できなくなります。体育祭の1週間前、図書委員の友人の代打として図書当番になった花音は、10年間貸し出されたままだった本を発見。誰がこの本を返したのか、挟まれていたメモに書かれた暗号の意味は何なのか、同級生の図書委員・俵朔太郎も引き込み、花音は本の謎を追いかける。
体育祭を控え校内が湧きたつ中、図書館を舞台に展開するミステリー。青春の切なさや学校独特の空気感など学生時代の記憶が鮮やかに思い出される、濃密かつ爽やかな一冊です。
繊細さに心動かされる「羊と鋼の森」宮下奈都
芸術の秋ということで音楽がテーマのこちらをおすすめ!
第13回本屋大賞受賞作。高校2年生の外村は何にも興味が持てず時間を持て余していましたが、ピアノの調律師・板鳥と出会ってからピアノの魅力に魅せられるようになります。調律学校を卒業後、板鳥の働く楽器店で調律師として働き始めた外村。ひたすら音に向き合い続けますが、なかなかコツがつかめず「何が正解なのか分からない」「どうすればイメージ通りの調律ができるのか」と、理想と現実の間で揺れ動きます…。
ピアノの調律師として成長していく青年と、彼を取り巻く人々との交流を描いた作品。美しい自然描写と登場人物の心の機微が丁寧に描かれており、静かで温かい気持ちにさせてくれます。ぜひ眠る前の穏やかなひとときに、音楽の透き通った世界を覗いてみませんか。
何度もページを開きたくなる「ハロウィーンの星めぐり」ウォルター・デ・ラ・メア
仮装しなくてもハロウィン気分を味わえるおすすめの一冊!
思わず夜空を見上げたくなる、幻想的な世界観の絵本。ハロウィンの夜、仮装した子供たちはジャック・オ・ランタンやがいこつ、おばけを張り切って飾り付けます。誰もがハロウィンの特別な雰囲気に心躍らせ、わくわく楽しそう。一方その頃、ほうきに乗った魔女たちは三日月に照らされながら空に飛び立ち、夜の散歩を楽しみます。ひしゃく座、しし座、オリオン座にカシオペア座。たくさんの星座をあおぎながら、魔女たちはひらりひらり、右に左に飛び回って…。
ハロウィンの夜、夜空を見上げれば魔女たちが空を飛んでいるのでは…という想像力を掻き立てられる作品です。キラキラとホログラムのように輝く星の絵が美しく、詩的な文章なので、こどもはもちろん、大人も楽しめます。
秋を満喫しよう!10月におすすめの読書法3選
夏とは打って変わり、気温や湿度がちょうどよくなる10月。いつもと同じ空間で読書するのもいいですが、せっかくなら秋を満喫できる方法を試してみませんか。ここでは、読書の秋にふさわしいおすすめの読書法を紹介します。
スローテンポの音楽を聴きながら読書
夜は静かで平和なひと時であり、誰にも邪魔されずじっくり読書を楽しめる時間。10月は日もグッと短くなり、自然と読書に集中できる時期でもありますよね。クラシックをはじめ、ゆったりした落ち着きのある音楽は集中力を維持するのに最適といわれており、読書との相性も最高です。
また、本の内容に合わせて音楽を選べば物語の世界に入り込みやすくなり、その場の情景がよりリアルに感じやすくなります。ただし、歌詞のある音楽はかえって気が散ってしまう可能性があるため、なるべく避けると良いでしょう。ぜひ心地よい音楽を探して、読書の魅力により深く触れてみてはいかがでしょうか。
喫茶店やカフェでコーヒーを堪能しながら読書
喫茶店やカフェのように適度な雑音がある場所は、脳がもっとも集中できるといわれています。また、コーヒーや紅茶の香りは心身をリラックスさせ、読書への集中力を高めるのに役立ちます。加えて、多くの喫茶店やカフェではジャズやボサノヴァなど心地よい音楽が流れていることも多く、読書の時間をより豊かにしてくれます。お店の迷惑にならないよう混雑時の長居は避けつつ、ぜひカフェでの読書タイムを楽しんでみてくださいね。
公園のベンチで季節の変わり目を感じながら読書
暑さ・寒さに悩まされない10月は、外で読書するのに最適な時期。秋の柔らかな日差しと心地よい風を感じながら読書に没頭する時間は、なによりも贅沢なひとときといえるでしょう。葉が赤や黄色に色づく木々の下、日常を忘れて本を読めるのは、10月ならではの特別な体験です。
ただし、10月はじめはまだ日差しが強い日もあるので、熱中症や日焼け対策は忘れずに。緑が多い場所では虫よけ対策も行って、快適な読書タイムを楽しみましょう。
おわりに
この記事では、10月におすすめの本と理想の読書法を紹介しました。秋の読書のおともには、音楽やコーヒー、自然を感じられる場所がおすすめです。10月は過ごしやすい日が続く、読書にぴったりの季節。ぜひ今回の内容を参考に、心地よい読書環境で充実した読書を楽しんでくださいね。