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Apr 08, 2024

大切な服を、かわいくお直し。はじめてでもできる「基本のダーニング」

そろそろ衣替えシーズン、ほつれてしまったり、穴が開いたりしたお気に入りの服の処分に迷っていませんか?
大切な服こそ、お直しして長く着ていたいもの。今回は、初心者でも試しやすい「ダーニング」のやり方を作家の平井絵美さんに教わりました。

教えてくれたのは
手芸作家 平井絵美さん

 

横須賀市在住。「nui.」の屋号で活動し、ダーニングの他、ステッチを施した布小物製作を手がける。鎌倉でダーニングのワークショップを不定期に開催中。instagram:@_nui.____

 

子育て世代が知りたい
可愛いお直し「ダーニング」とは?

▲点々模様や四角、丸などさまざまなデザインがあります

 

日本でも、手芸好きの間では「ダーニング」という言葉がすっかり一般的になりましたが、聞いたことはあってもいまいちイメージできていない、という方も多いのでは。

 

ダーニング(Darning)は英語で、直訳すると「糸でかがること」。ヨーロッパに古くから伝わる修繕法で、特に、ものを捨てずに繰り返し使う習慣のあるイギリスでは、数世紀にわたって受け継がれてきた長い歴史があります。

 

手法としては、穴が開いた箇所に縦糸と横糸を渡して、織物のように穴を塞いでいく方法が一般的。一見手の込んだ見た目ながら、じつは最低限の道具だけではじめられ、シンプルな手順でできるところも魅力です。

 

穴があいたりほつれたりして着られなくなった衣服が、色とりどりの糸で繕うことで素敵に生まれ変わるので、大人の服はもちろん、子ども服のお直し法としてもおすすめ。手芸作家の平井さんも、二人の子どもの衣服にダーニングをすることも多いそうです。

 

 

平井さん:
「子どもが小さいうちは特に、遊んでいてひざを擦ったり、どこかに引っ掛けてしまったりして、服の穴開きやほつれはつきものですよね。それから、お下がりの服を着る機会も多いので、まだ着せたいけれど穴が開いてしまった、なんてこともあると思います。

 

ダーニングなら既存の衣服にワッペンを貼るように彩りやあしらいがプラスできるので、ただ『直す』以上に可愛く生まれ変わらせられるのも魅力。シンプルな服に施すと、また新しい印象がプラスされて、袖を通すのが楽しくなります。

 

私もはじめは子どもの衣服のお直しにダーニングをしていましたが、今ではちょっとマンネリした服や小物に、あしらいとしてダーニングを施すこともあるほど。

 

いちから衣服を手作りするのは難しくても、ダーニングをするだけで、ハンドメイドの温かみがプラスされるところも気に入っています」

 

▲平井さんのご自宅には、ダーニングで可愛く生まれ変わった洋服がたくさんありました

 

 

手芸が苦手でも、初めてでも大丈夫!
おおらかに取り組める「ダーニング」の魅力

 

平井さん:
「型紙を作ったり寸法をきちんと測ったりしなくても、おおらかに繕えるところがダーニングの魅力です。私自身、元々は細かな作業が苦手でしたが、ダーニングをきっかけに手芸の楽しさを知りました。

 

道具もシンプルで、基本的にはどこの家庭にもある裁縫道具(と糸)があれば大丈夫。ダーニングマッシュルームという固定用の機器が本来は必要ですが、似たような球体の『おたま』や『ガチャガチャのカプセル』で代用していただくこともできます。

 

ダーニング専用の糸も販売されていますが、基本的には細すぎなければ好みの糸を選んでいただいてOKです。刺繍糸に、刺し子用糸、ソックヤーン(靴下用の毛糸)も使えますし、細めの毛糸でも。衣服のテイストによって変えてみてもいいですし、異素材の糸を組み合わせても可愛いですよ。

 

針は、毛糸を使うなら毛糸とじ針、刺繍糸をなら刺繍針、刺し子糸なら刺し子針というように、使う糸に合わせて選ぶとより繕いやすいです。

 

ダーニングに慣れてくると、破れてしまったら終わり、ではなく、直して使うという選択肢がもてるので、服選びがもっと楽しくなるはずです」

 

穴やほつれだけでなく、シミや脱色部分も繕えるそう。襟ぐりや袖の補正に使える点状のものや、四角形、丸型など手法もさまざまです。

 

今回は2色の糸を使った、基本のやり方を教わりました。

 

 

穴あきが愛らしいワンポイントに
「基本のダーニング」

 

道具と材料

 

・刺繍糸(40cmほどの長さを2本)

・刺繍針
・ダーニングマッシュルーム(布を固定する球体状の棒。なければお玉やガチャポンカプセルなど、球体のもので代用OK)

・ヘアゴム(輪ゴムでも可)
・糸切りばさみ、チャコペン、糸通しなど基本の手芸道具

 

 

今回は直径1センチほどの穴があいた子どものズボンを繕います。

やり方

1.ダーニングする位置の目印をつける

 

 

穴の開いた部分がダーニングマッシュルームの中心に来るようにして、ヘアゴムなどで固定する。

 

 

穴より5mmほど大きめの四角形をチャコペンで描き、ダーニングする位置の目印をつける。

 

 

2.縦糸を縫

 

 

縦糸を針に通し、1で描いた四角形の角(1)をひと針すくって糸を通す。このとき、糸端は始末のために10cmほど残しておく。

 

 

対になる角(2)をひと針すくい、糸を渡らせる。

 

次に、(2)のすぐ隣(3)をひと針すくい、ふたたび反対側の辺(4)をすくって糸を渡らせる。

 

 

この作業を繰り返しながら、縦糸が四角形の全面に渡るようする。最後までいったら、はじめと同様に糸の端を10cmほど残して切る。

 

 

3.横糸を縫う

 

 

横糸を針に通し、縦糸のはじまりと同じ位置(四角形の角)をひと針すくう。このとき、糸端は縦糸と同様に、始末のために10cmほど残しておく。

 

 

2で縫った縦糸を針で1本おきにすくうようにして、手前から奥へ糸を渡す。上の写真のように糸を通したら、すぐ近くの布をひと針すくって糸を固定し、つぎは反対方向から手前に向かって、前回通さなかった糸を1本おきにすくうようにして通していく。

 

 

この作業を繰り返していくと、縦糸と横糸の網目が交互になっていく。

縦糸の端まで、同様に横糸を通していく。

 

 

4.糸の始末をする

 

 

残していた糸の端(縦糸のはじめと終わり、横糸のはじめと終わりの計4本)それぞれを針に通し、ダーニングの刺繍面と下布の間に針を刺して、糸の端をおさめていく。

 

 

残った糸は糸切りバサミでカットすれば、できあがり。

 

 

平井さん:
「縦糸と横糸の色は変えなくてもOKです。色選びによって印象も全く変わるので、ぜひ洋服に合う色を試してみてくださいね。

 

生地に合わせた同系色の糸を選ぶと大人っぽくおしゃれな仕上がりに。子どもの衣服などは、あえて目立つ色を選んでポップなアクセントにするのもかわいいですね。

 

横糸を縦糸の合間に通していく作業は一見難しく感じられるかもしれませんが、少しくらい糸目がずれても、遠目でみればそれもまた愛嬌です。気負わずおおらかにやってみてくださいね。

 

糸の始末はシンプルな玉留めでもOKですが、今回のように肌に直接触れるものは、玉留めがあると着心地が悪くなってしまうので、できるだけ結ばないやり方で始末できると便利でしょう」

 

 

今回教わったのは基本のダーニングですが、そのほかにも襟ぐりや袖の補正に使える点状のダーニング、丸型のダーニングなど手法はさまざまです。興味をもった方は、ぜひいろいろと試してみてください。

 

 

マグネットな本
繕うように営む暮らしに憧れて

 

ときをためる暮らし(つばた修一・つばた英子 / 自然食通信社)

 

映画「人生フルーツ」を観たのがきっかけで手に取った1冊です。主人公のつばたさんご夫婦は自分たちで野菜を育て、さまざまな料理を作り、暮らしのあらゆるものを手作りし大切にしていて、私もこんな風に暮らしを送りたいと読むたびに感じさせてくれます。そして私が提案する「お直し」の世界にも通じているように感じます。

 

 

Photo_Daisuke Hashihara Interview,Text & Edit_Kaoruko Seya