その独特な風味と香りで料理の美味しさを引き立てるスパイスにはたくさんの種類があります。近ごろはスパイスカレーブームの到来により、あちこちでいろいろなスパイスの名前を聞くようになりました。しかし、スパイスの名前だけを見てもどのような味や香りがするかをイメージできる人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、スパイスの種類とその魅力について紹介し、どのように料理に使われているか解説します。
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スパイスとは
スパイスとは、料理や飲み物の風味を引き立てるために使用される調味料の一種です。スパイスは植物の種、根、樹皮などから採取され、かつては貴重な貿易品としてヨーロッパを中心に取引が行われました。
スパイスの役割
スパイスには大きく分けて4つの役割があります。香り付け、辛味付け、色付け、臭み消しです。香り付けをするスパイスはシナモンやクローブなどが挙げられます。辛味付けをする代表的なスパイスは唐辛子やブラックペッパーなどです。色付けをするスパイスはサフランやターメリックなどが挙げられます。臭み消しをするスパイスとしてよく知られているのは、ショウガやガーリックなどです。なかには、複数の役割を持つスパイスもあります。
世界4大スパイスとは
世界4大スパイスとは、こしょう、ナツメグ、クローブ、シナモンを指します。この4つのスパイスはかつて重要な取引商品であり、世界の歴史に大きく関わったといわれています。ヨーロッパの探検家たちが東南アジアやインドにスパイス(香辛料)を探しに行った大航海時代には、これらのスパイスが特に入手が困難とされていたことから「世界4大スパイス」と呼ばれるようになりました。
辛味を足すスパイスの種類
辛味を足すスパイスは、料理にアクセントを加えるだけでなく、さまざまな健康効果も期待できます。この見出しでは、辛味を与える主要なスパイスについて解説します。それぞれのスパイスが持つ特徴や用途について詳しく見ていきましょう。
唐辛子
唐辛子は、料理に強烈な辛味を加えるためのスパイスとして広く愛用されています。麻婆豆腐やトムヤムクン、キムチには唐辛子が欠かせません。これらの料理は、唐辛子の辛味が料理全体の味わいを引き立て、食感や香りのバランスを整えています。
ブラックペッパー・ホワイトペッパー
ブラックペッパーとホワイトペッパーは、加工方法の違いによってその色と風味が異なるのが特徴です。ブラックペッパーは、ペッパーコーンを成熟前に収穫し、乾燥させることで黒い色に変わります。多くの料理で味を調えるのに使われますが、代表的なのがステーキやグリル料理などの肉料理です。一方、ホワイトペッパーは、成熟したペッパーコーンの外皮を取り除いて乾燥させて作られます。ブラックペッパーに比べて香りが控えめで、よく使われる料理はクリームソースやホワイトスープなどです。
山椒
山椒は、ピリッとしびれるような辛さが特徴で、その要因となっているのがサンショールです。この成分が口の中で独特な刺激を生み出します。山椒を使う代表的な料理は、うな丼や麻婆豆腐です。ほかには豚肉料理や鶏肉料理にもよく合います。
ショウガ
ショウガは、独特の辛味と香りを持つスパイスです。ショウガに含まれるショウガオールやジンゲロールなどの成分は、ショウガに特徴的な味わいをもたらし、料理の風味を豊かにします。代表的なのが生姜焼きですが、ほかにはタンドリーチキンやサムゲタンなどにも使用されます。
ワサビ
和食のイメージが強いワサビもスパイスの一種です。ワサビの独特の辛味は、アリルイソチオシアネートによって生み出されています。この成分が口に入った瞬間に鼻にツーンとくる独特の刺激をもたらします。ワサビは寿司や刺身、ローストビーフなど、さまざまな料理に幅広く活用されています。
マスタード
マスタードは、辛味とともに爽やかな風味を持つスパイスです。マスタードの辛味は、シニグリンが分解される際に生じるアリルイソチオシアネートによるものです。ワサビと同じアリルイソチオシアネートが、特有の刺激的な辛味を引き起こします。マスタードはホットドッグやサンドイッチのソースとして使用されることが多いです。
香り付け・臭み消しをするスパイスの種類
スパイスは辛いものだけではありません。スパイスには料理に香りをプラスする役割や反対に食材の臭みを消す効果もあります。ここでは、香り付けや臭み消しに使われる代表的なスパイスについてご紹介します。
クローブ
クローブは、甘く濃厚な香りとしびれるような風味を併せ持つスパイスです。特に肉料理では、その強い香りが肉の臭みを消してくれるため、しばしば使用されます。また、その甘い香りを活かして、菓子やドリンクの香り付けにも利用されています。
シナモン
シナモンは、甘くて温かみのある香りが特徴のスパイスで、特にデザートや飲み物との相性が抜群です。シナモンアップルパイやパン、クッキー、ジャムなどの菓子類に使用されています。また、紅茶やコーヒーにシナモンを加えることで、飲み物の味わいも深まります。
コリアンダー
コリアンダーは、柑橘系の爽やかな香りを持つスパイスです。この特徴的な香りが料理に爽快感を与え、食材の風味を引き立てます。インド料理の調味料として使われるミックススパイスの1種、ガラムマサラやサラダ、カレーなどに使われます。
カルダモン
カルダモンは、甘さとスパイシーさが両立する複雑な香りを持ち、その魅力から「香りの王様」とも呼ばれるスパイスです。カルダモンは肉・魚料理やカレー料理、パンや菓子、ドリンクなどの香り付けに幅広く使われています。
スターアニス
スターアニスは、その星型の特徴的な形状と、強くて甘い香りで知られるスパイスです。日本では八角とも呼ばれており、スターアニスの形状からその名がつきました。スターアニスは中華料理の香り付けに使われます。また甘い香りを活かしてデザートに活用されることも多いです。
ローズマリー
ローズマリーは、樹木のような独特な香りを持つハーブスパイスです。この香りはクセの強い食材の臭みを消す効果があります。特にイタリア料理やフランス料理では定番のスパイスです。ローストチキンやラム肉料理、ローストポテトなどに使われます。
ナツメグ
ナツメグは、甘くてスパイシーな香りが特徴のスパイスです。特に肉の臭みを消す効果が高く、ハンバーグやロールキャベツ、ミートソースなどのひき肉料理に欠かせません。また、クリームシチューやチーズフォンデュなど、乳製品を使った料理に少量加えることで、乳製品固有の臭みを和らげます。
クミン
クミンは、カレーを連想させるエスニックな香りを持つスパイスです。世界各地の料理に使われていますが、チリコンカンやタコス、そしてカレースパイスのブレンドに使用されることが多いです。
オールスパイス
オールスパイスは、シナモン、ナツメグ、クローブが合わさったような独特の香りを持つ、スパイスの1種。オールスパイスという名前がついていますが、スパイスの総称ではなく、単体のスパイスです。オールスパイスはハンバーグやスープ、シチューなどの風味付けに適しています。また、その甘さを活かして焼き菓子にも広く使われています。
ガーリック
ガーリック(ニンニク)は、強烈でスパイシーな香りを持つスパイスです。ガーリックをすりおろしたり刻んだりしたときに発生する特有の成分「アリシン」によって、その香りや味が一層引き立ちます。ガーリックは肉や魚の臭みを消す効果があります。炒め物や煮込み料理、スープやソースに幅広く活用され、家庭料理においても欠かせない材料です。
色味を付けるスパイス
食欲をそそる見た目にするために、スパイスが使われることもあります。代表的な色味を付けるスパイスをいくつかご紹介します。
ターメリック
ターメリックは黄色の色付けに使うスパイスです。ターメリックにはクルクミンが含まれており、この成分が料理に黄色をプラスします。例えば、カレーやピラフなどにターメリックを加えると、見た目が黄色く、鮮やかになります。
サフラン
サフランは料理に美しい黄色を加えるスパイスです。その黄色色素はクロシンと呼ばれ、水溶性であるため、水に浸すか煮込み料理などに直接入れることで鮮やかな色が出ます。この特性から、サフランはパエリアやリゾット、そしてサフランライスなど、世界各地の料理に使用されています。
パプリカ
パプリカは料理に赤やオレンジの鮮やかな色味を加えます。ただし、スパイスのパプリカと、日本でよく売られている野菜のパプリカは別の品種です。パプリカを使う料理で代表的なのがハンガリーの「グーラッシュ」と呼ばれるスープです。牛肉や玉ねぎを加えたスープに、パプリカで赤く色付けをします。ほかには、ポテトサラダやグラタン、マリネなどの仕上げにパプリカパウダーを振りかけると、華やかに仕上がります。
食材のおいしさを引き出すスパイスの魅力
この記事では、世界各地で使われているスパイスの種類について詳しく説明しました。スパイスはスーパーマーケットなどで簡単に手に入ります。ぜひ、料理にスパイスを取り入れて、日常の食事を一層豊かにしましょう。スパイスを使いこなせば、料理の幅が広がり、新しい味わいを発見できるはずです。