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Nov 01, 2022

料理のプロが毎日使うキッチンSNAP!自宅で真似できるこだわりと工夫を拝見

毎日料理をするキッチンは、使いやすくて、立っているだけで楽しくなる空間にしたいもの。でも、実際は忙しさも相まって雑然としていたり、使い勝手もイマイチだったり、と実は納得いっていないという人も多いのでは。
そこで、料理のプロ3人のキッチンをSNAP。こだわりと工夫で満ちあふれた全体のコーディネート・お気に入りの器や調理器具・欠かせない収納方法など、皆さんの役に立つ情報が満載なはず。

MOKUJI

料理研究家・植松良枝さんのキッチンSNAP

 

植松良枝さん

日本の食を軸に置きつつも、世界各国の食文化や歴史にも深い関心を寄せている料理研究家。さまざまな食のフィールドで経験を積み、現在は雑誌やテレビへのレシピ提案、レストランや企業へのレシピ提供を行いながら、料理教室やライフワークの野菜作りにまつわるイベントなどを企画。Instagram

愛用品の存在感とメタリックな清潔感が同居するキッチン

 

「仕事柄もあり、家族の食事を作るとき以外にも多くの時間を過ごす自宅のキッチン。シンプルな造りや便利さは気に入っているのですが、建て売りを購入したマンションなので味わい深さや使い込まれた感がなくて、なるべく味わいのある木材や金属などの自然素材を取り込んで中和させ、自分にとって居心地の良い空間にしています。

雰囲気を保つために、色のついたプラスチックやポリプロピレン製の保存容器はすべて扉のある棚に収納し、視界に入れないようにしています。子育てをしていると部屋はもちろんキッチンもどうしても散らかりがちですが、私にとってはメンタルに著しく影響を及ぼすので、時間の許す限り片付け、より心地よい空間になるよう試行錯誤しています。

お気に入りの音楽をかけながらキッチンにこもって、焼き菓子を焼いたり煮込んだりする時間は、とても幸せだな~と日々感じています」

お気に入りツール①イタリアで買ったカッティングボードと水切りカゴ

 

「20代に初めて行ったイタリア旅行で抱えて持ち帰ってきたカッティングボードです。
パン専用の仕様で、すのこ状になっている部分でパンを切ると下にパンくずがたまる仕組み。同じようなデザインのものは見かけますが、オリーブの木でできているものはなかなかなく、取っ手が真鍮製なのも気に入っています。

水切りカゴはアンティークの銅製。佇まいがいいので、フルーツをこの中で洗って水切りして、このままテーブルに出すこともしばしば」

お気に入りツール②bamixのハンディ・フードプロセッサー

 

「スイス生まれでハンディ・フードプロセッサーの元祖といわれる『bamix』、我が家のものはすでに20年選手。
マヨネーズやドレッシングはビンに材料を入れたまま回せば一瞬で完成して、トマトの水煮缶に入れてかき混ぜても飛び散ることはありません。簡潔な使い心地がお気に入り」

お気に入りツール③スペイン・ガリシア地方の白ワイン用の杯

 

「クンカと呼ばれる杯は、現地を旅した友人に頼んで買ってきてもらいました。

とっても使い勝手が良く、ちょっとしたおつまみや薬味、ソースやジャムなどをテーブルに出すときにとっても重宝。スタッキングもできるんです。
まだこれで白ワインを飲んでみたことはありませんが、今度ガリシア産の白ワインで試してみようと思っています」

お気に入りツール④ベトナム産の塩漬けコショウ

 

「セミドライ気味で奥歯で噛みしめると、鮮烈な黒コショウの香りが口いっぱいに広がります。

豚の煮込みの仕上げに散らしたり、クリームチーズに混ぜてベーグルサンドにしたり、砕いてライム汁と塩を混ぜ合わせて鍋のタレにしたり。封を空けた瞬間、とにかく香りがレベル違いです」

「中華可菜飯店」店主・五十嵐可菜さんのキッチンSNAP

 

五十嵐可菜さん

大学時代のアルバイトをきっかけに中華料理に興味を持ち、数年にわたり修行後、ケータリングやイベント出店の活動を経て2021年に杉並区永福町に「中華可菜飯店」をオープン。「健全でヘルシーな中国料理」をコンセプトに日々腕を振るっている。お店Instagram 個人Instagram

テーマは「上海の奥地にある小さなキッチン」

 

「私にとって一番安心できる場所であるお店のキッチン。
以前上海に行ったとき、メイン通りから路地裏に入ったノスタルジックなイメージが忘れられなくて。床のコンクリートを塗り直さずそのまま使ったり、土由来の塗料を壁に施してもらったりしてイメージを再現してもらいました。

もともと広いスペースではないので必要なものだけ出して、散らかりすぎないように心がけています。最初はお皿の置き場所がなくて作業台の上が常にものであふれてしまう状態でしたが、今はいくつか棚をつけてそこに小さな蒸籠やお皿を置けるようにしています。
自慢は作業台の上部にあるパイプ棚。強い材質のものなので何を置いても大丈夫。銅鍋やアルミ鍋などさまざまなものを収納しています。

ただ、なんでもしまうのではなくて、よく使う調味料や道具は手の届くところにレイアウトすることで、使い勝手の良さも心がけています。
コンロと調理場の間に柱があって行き来するときに少し邪魔なので、今後改善していきたいです」

お気に入りツール①照宝のせいろ

 

「横浜中華街の中華調理器具や食器を扱うお店『照宝』の蒸籠は、毎日使っているので段々年季も入ってきました。
少し焦げてしまっている部分があるんですが、それさえも愛おしいです」

お気に入りツール②Vitantonioのハンドブレンダー

 

「日本の調理家電ブランドでシンプルさと使いやすさが人気の『Vitantonio』。

このハンドブレンダーはコンパクトなのに、フードプロセッサーとしても使えるのでとても便利です」

お気に入りツール③お店で使っている大皿

 

「縁の色使いや龍の柄が気に入っている大皿。通販サイトで購入しました。
円卓で大人数の料理を盛るときに使っています」

お気に入りツール④DADA NUTS BUTTERのODD鮮仁醬

 

「高知県香美市で製造されている『DADA NUTS BUTTER』。
このODD鮮仁醬はアーモンドバターにかつおや干しエビなどが加わり、他にはない味わいでとても使いやすいです」

「Cyōdo」店主・山口萌菜さんのキッチンSNAP

 

山口萌菜さん

幼少期にヨーロッパで生活し、各国の食文化を身近に感じる日々を過ごす。現在はフランスの家庭料理とお気に入りのナチュラルワインが人気のビストロ「Cyōdo」を渋谷区幡ヶ谷で営む。店名はコンセプトでもある「ちょうどいい落ち着ける場所」に由来している。お店Instagram 個人Instagram

日々のベースになるキッチンは好きな道具を少しずつ

 

「住んで1年弱の自宅キッチンは広さ4畳ほど。まだまだそろっていないものもありますが、長く愛着を持って使える道具を少しずつ増やしていくことを意識しています。
私にとってキッチンは息抜きの場所。今はお店を持って料理を作ることを仕事にしていますが、もともとストレスが溜まったり悩むことがあったりしたとき、料理に集中することで解消していました。
このキッチンでは仕事がある日は主に朝食だけ作ります。オムレツ・ソーセージかベーコン・フルーツ・ヨーグルト・コーンフレーク・淹れ立てのコーヒーを、レコードを流しながら食べる時間を大切にしています。
休日には友人を招いて私が作りたいものを好きに作って、食べてもらうような会を開催したりします。
シンクが広いところと備え付けの収納が多いところがお気に入りなんですが、機能的にはまだこだわり切れていないので、今後手をつけていきたいですね」

お気に入りツール①デロンギのカフェケトル

 

「調理中にお湯が必要になったとき、コンロの数をつぶすことなくお湯を用意できる優れもの。

コーヒーやお茶を淹れるときも、細かい温度調整ができるので重宝しています」

お気に入りツール②デロンギのコンベクションオーブン

 

「電子レンジは置かず、このコンベクションオーブンのみでまかなっています。
見た目の部分もそうですが、昨今の多機能すぎるオーブンと違ってコンベクション機能に長けているのでオーブン料理はもちろん、お菓子の試作などにも役立っています。
操作が直感的なところも気に入っているポイント」

お気に入りツール③ウィルファーのコーヒーミル

 

「お店では中深煎りの豆を使用していることもあって『Kalita』のものを使っていますが、自宅では浅煎りなどいろいろな種類の豆を飲むことが多いので、コーヒーにくわしいの友人の勧めでこのミルを使っています。
挽きの調整が簡単にできるところと、香りがとても繊細に立つところが気に入っています」

お気に入りツール④ヴィンテージショップで購入したアメリカのの丸皿とアラビアの深皿

 

「店ではイタリアの業務用のお皿『サタルニア』を使っていますが、自宅ではアメリカやアラビアのヴィンテージや作家ものなど一点ものを中心に集めています。まだまだ増やしていきたいですね」

お気に入りツール⑤何に使っても美味しいアドリア海の塩とモデナ産のバルサミコ酢

 

「粒が大きめのイタリア・マシャントニオ農園の岩塩で、幅広い料理に合います。甘味があるというよりはミネラル感が強く旨味がたっぷりの塩です。

となりは同じくお気に入りのモデナ産のバルサミコ酢。りんごのまろやかな甘味とバルサミコの深みのあるコクと酸味にゾッコンです」

【マグネットな本】植松良枝さんを引き付けた一冊

『くらしマグネット』の出演者に、その人のライフスタイルに大きな影響を与え、まさに磁石のように吸い寄せられた一冊を紹介してもらうコラム「マグネットな本」。
植松良枝さんにそんな本を選んでもらいました。

おおつきちひろ「スペイン熱い食卓 本場仕込みのやさしい家庭料理」

 

「スペイン料理に関する料理の本を探していて出会った一冊。
手元にあるものはすでに9刷目のもの。出版されてからかなり時間が経ってから購入したものだと思いますが、私にとってスペイン料理とは、家庭料理の真骨頂とは何かを教えてくれた素晴らしい本です。

スペイン各地でその地に根を張り、作られ続けている料理や調理法を日本に紹介してくださった第一人者である作者のおおつきちひろさん。すべての料理に丁寧な説明が添えられ、ビビッドな写真を眺めつつ読んでいると料理が生き生きと立ち上がってきます。

のちに友人の紹介で吸い寄せられるように彼女の料理を習うことになり、いよいよこの一冊が教科書のような存在に。私がスペイン家庭料理を知るうえで重要な存在になりました」

 

 

Text & Edit_Yasushi Shinohara