ストレートな愛情を示してくれるイヌは「人間最古のパートナー」ともいわれる動物。相性の良さは歴史が証明しているものの、相思相愛を保つためにはお互いにとっての「快適な空間」を作り上げることが大切です。
理想的なイヌとの暮らしに迫る本連載。今回は原宿の美容室「whyte」を営む浜本忠勝さんと中島潮里さんが登場。一緒に暮らすマレくん&アモちゃんとの生活を拝見してきました。
MOKUJI
●イヌ:マレくん(右・2歳)・キャバリアとマルチーズのミックス・少し繊細で人見知りのお兄ちゃん/アモちゃん(左・1歳)・ダルメシアン・活発で人懐っこい妹
●家主:浜本忠勝さん(左・30歳)・美容室『whyte』代表(Instagram)、国際ヴィーガンビューティー協会会長・好奇心旺盛なアクティブ男子/中島潮里さん(右・32歳)・美容室『whyte』スタイリスト(Instagram)、サスティナブルアンバサダー・芯が強いポジティブ女子
●おうち:51平米・メゾネットタイプの1LDK・築年数14年・世田谷区
マレくん・アモちゃんとの出会い
―まずは愛犬たちとの馴れ初めを教えてください。
浜本さん「マレを飼い始めたのは今の家に引っ越しをする前で、ずっと注目していたブリーダーさんがネットで紹介していたことが出会いのキッカケです。僕は子どものころからシーズーやマルチーズが好きだったので、その2種を混ぜたような雰囲気がたまらないなと。中島と一緒に見学に行ったら、もうイチコロでしたね(笑)」
―美容師さんはどうしても家を空けてしまう時間が長くなってしまうと思いますが、犬を飼うことに迷いはありませんでしたか?
浜本さん「ちょうど独立して自分の店を開いたタイミングだったので、看板犬として一緒に出勤してもらえば留守番の時間を減らせることは分かっていました。
ただ、2人目としてダルメシアンのアモを迎えるときには強い覚悟が必要でしたね。ずっと飼いたかった犬種だったんですが、大型で運動量も多いので、責任を持って面倒を見れるのか、じっくり話し合って決めました」
中島さん「私は実家でゴールデンレトリバーを飼っていたので、大型犬と一緒に暮らすことに不安はありませんでしたね。結局、前のめりなテンションで一緒にブリーダーさんに会いに行って、アモの母親が妊娠する前から『“おめでた”のときはすぐに連絡をください!』と伝えてました(笑)」
犬と同居する“家探し”でこだわったこと
―では、今の家はアモちゃんを飼うことを見越して住み始めた物件なんですね。
浜本さん「そうですね。以前の家は大型犬を飼うには狭かったですし、物件探しの条件は『マレとアモを育てやすい環境』であることが大前提でした。
この家はメゾネットで2階建ての一軒家のような感覚で住めるし、ドアノブや手すりも賃貸のマンションではなかなか見かけない凝ったデザインになっていて。僕が好きなアメリカンヴィンテージなテイストのインテリアにも合いそうだなと。内見に行った当日に仮契約を済ませたくらい気に入っています」
中島さん「テラスではイヌたちが日向ぼっこできるし、大きな公園が近いので散歩もさせやすいなと。近所に大型犬を飼っている世帯も多いし、近隣エリアがドックフレンドリーであることもこの家に住む決め手になりました」
―大きなガレージもあるんですね。本当にアメリカみたいです。
浜本さん「僕は車が好きなので、そこも気に入っているポイントです。趣味のキャンプを楽しむためのアイテムもそろえやすいし、暖かい季節は4人(2人と2匹)でアウトドアライフを満喫しています」
中島さん「私は寒がりなので、キャンプはほどほどにしてほしいんですけど(笑)」
マレくん・アモちゃんとの「暮らしぶり」
部屋のコンセプト
―お部屋のテーマやコンセプトはありますか?
浜本さん「インテリアに関しては僕が好きなものを詰め込んでいる感覚です。生活感のないミニマリスト的な空間よりは、ごちゃごちゃした部屋に温かみを感じるので、お気に入りの雑貨や植物をいっぱい置いています」
―ものが多いと遊びたい盛りのワンコがイタズラして大変なのでは?
浜本さん「かじっても大丈夫なオモチャをたくさん与えてきたので、今のところ大切なものを壊されるような事件は起きていません(笑)。誤飲してほしくない植物や傷つけてほしくないものには市販のビターアップルスプレーをふりかけていて、おかげでかなり噛みグセが治ったと思います」
お気に入りの場所
―お部屋の中で、4人のお気に入りの場所を教えてください。
中島さん「イヌたちは窓際に置いたベッドでお昼寝していることが多いですね。この家はもともと想定していた家賃よりも高い物件なのですが、気持ち良さそうに並んで寝ている姿を見ると、頑張って良かったと思えます(笑)」
浜本さん「僕たちはリビングのソファやイスに座って過ごすのがお気に入り。去年のステイホーム期間中に奮発してイームズのロッキンチェアを買ったので、朝早く起きてふたりでゆったりコーヒーを飲む時間が好きです」
イヌと暮らす上で、こだわっているポイント
―イヌと飼い主が、お互いに快適に暮らせるように工夫していることはありますか?
浜本さん「なるべく空間を広くしてあげることですかね。以前はリビングの中央にローテーブルがあったんですが、マレとアモが邪魔そうにしていたんですよね。
興奮して寄ってくると落ち着いて食事をすることもできないので、キッチンの横にカウンターテーブルを設けることにしました」
中島さん「最近はおかげさまでお客さんが多く職場に連れて行けていないので、体力が有り余って家で暴れ回らないように、仕事で遅く帰宅した日も近所のドッグランに連れていくようにしています」
愛犬家としてのヴィーガンライフ
―おふたりは「whyte」でのサロンワークやSNSを通してヴィーガンライフを発信していますが、そのこだわりはイヌとの暮らしにも反映されているのでしょうか?
中島さん「イヌが触れるベットやぬいぐるみなどを洗うときには自然由来成分にこだわった洗剤を使っていて、同様にお風呂ではペット用のヴィーガンソープで体を洗ってあげています。
私自身、ケミカルな製品を避けるようになったことで体調が良くなった経験があるので、なるべくイヌたちにも気を使ってあげたいなと」
浜本さん「ただ、ご飯に関しては無添加にはこだわっているものの、100%ヴィーガンにはしていません。もともと肉食獣だし、それを矯正させようとするのは人間のエゴかもしれないと思って。栄養バランスのことも考えながら、今は魚の入ったペットフードも与えています」
イヌ用チョーカーもヴィーガン仕様
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―昨年12月に立ち上げたというドッグブランド『Chu.』では、今後どんな商品を発信していく予定ですか?
浜本さん「もともと保護犬やレスキュー犬に対して自分にできることを探し始めていたところ、お客さんを通じてイタリア製の質の高いアップルレザーに出会いました。それを使ったドッグチョーカーが『Chu.』の第1弾商品になります。
売り上げの一部を保護犬やレスキュー犬を支援する団体に寄付するという社会的な意義も感じながら、シンプルに自分好みのおしゃれなグッズを作りたいという気持ちも抱いています」
―アップルレザーって、アモちゃんのようなワンパク犬が走り回ってもちぎれないのでしょうか?
浜本さん「もちろんです(笑)。肌触りと耐久性にこだわって、外側は廃棄予定のりんごを使用したレザーで、裏側はコルクレザーになっています。」
―マレくん・アモちゃんと暮らし始めたことで、ヴィーガンライフへの意識に変化はありましたか?
中島さん「そうですね。実家でイヌを飼っていたので命を守る責任の重さは知っていたつもりですが、マレとアモと一緒に生きるようになってからは命の平等さについて考えるようになりました。イヌが好きなのに、本革の服を着るのは差別かもしれない…といったことを考えるキッカケをもらいました」
浜本さん「もはやマレとアモを“飼っている”というより、自分以上に大切な家族なので。普段はお肉をいっぱい食べているのに、イヌを可愛がっていることに少なからず矛盾を感じるようになりました。
ただ、考え方はそれぞれ違うし、僕は日頃から我慢してヴィーガンフードを食べたりサスティナブルな製品を選んでいるわけではありません。これまでの人生で食べたことのないような味や、新しいライフスタイルに出会えることが、純粋に楽しいんですよ」
イヌと暮らすうえでのMy3ヶ条
その1 ルールを決めすぎない
中島さん「トイレトレーニングなどのしつけはしますが、『これはダメ』『こうしなきゃいけない』といったルールを決めすぎないようにしています。人間もイヌも生き物なので、お互いを縛り付けないように、その日の気分によって楽しみ方を変えられるような心持ちでいたいと思っています」
その2 一方的に怒らない
中島さん「イヌがイタズラをしてしまう背景には何らかの原因があると思うので、感情的に怒るのではなく、気持ちに寄り添って考えるようにしています。そこは人間同士の信頼関係の築き方と変わらないのではないかと」
その3 オシャレも妥協しない
浜本さん「イヌ用のグッズはインテリアに馴染むことを重視しています。僕の場合はアウトドアブランドのアイテムを探すことが多いです。ちゃんと機能性が担保されていれば、デザインが人間のエゴを反映しても良いかなって(笑)。
お互いが豊かな気持ちで暮らすためには大事な視点だと思っています」
おわりに
インタビューを通して、浜本さんと中島さんは愛犬のことを「2匹」ではなく「2人」と言うのが印象的でした。命の価値は、人間もイヌも変わりません。リビングを伸び伸びと駆け回るマレくんとアモちゃんを見ていたら、実の子どものように愛されていることが伝わってきました。
お互いの存在を尊重することで、みんなが居心地の良い家のカタチが見えてくるのかもしれません。
Photo_Takumi Shinoda(go relax E more) Interview & Text_Satoshi Asahara Edit_Yasushi Shinohara