いつの間にか日が暮れるのが早くなり、コートが手放せない季節です。そんな寒い時期においしく感じるのが、お茶やホットミルクなどのあたたかな飲み物ではないでしょうか。冷え切った体を内側からあたためてくれるホットドリンクは、心も体もほぐしてくれるようです。
今回はそんなホットドリンクをもっと楽しめるように、スパイスを使った一味違うレシピをご紹介します。
MOKUJI
初心者でも楽しめる種類を、スパイス専門家がご紹介
独特な風味で味わいに奥ゆきを加えてくれるスパイス。使いこなせるようになりたいと思いつつも、種類が多すぎてどれを選べば良いのか難しく感じている方も多いのではないでしょうか。
そこでまずはスパイスにもっと親しんでみようと、初心者におすすめの使い方や種類を聞きました。
ご紹介くださったのは、スパイスの資格認定監修や企業研修、専門書の執筆など、スパイス専門家として多岐にわたり活動をしている日沼紀子さんです。
「組み合わせは無限。だからスパイスはおもしろいんです」と、種類の豊富さこそスパイスのおもしろさだと楽しそうに語る日沼さんに、さっそくスパイスの世界を案内していただきます。
POINT1:はじめの一歩は「ミックススパイス」から
「スパイスは一種類の方が癖を強く感じるんです。なのでまずは色々な種類が混ざっているものを選んでみてください。お店の棚に並んでいるものの裏ラベルを見ると、原材料が書いてあります。複数書いているものを選ぶといいですね。
もっとスパイスのことを知りたくなったら、好きな味のミックススパイスの裏ラベルを調べてみるのがおすすめ。使われているスパイスの名前がわかると思うので、今度はその中から数種類選んで試してみたら良いと思います」
POINT2:ホールと粉なら、まずは粉から試してみて
「スパイスは粉とホールが売られていますが、手軽なのは断然粉。そのためあまり使ったことがない方はまずは粉を試してみてください。
強い香りが好みでない場合は、ホールがおすすめ。煮出すなど調理に手間はかかりますが、ホールの方が香りがやわらかなんです」
POINT3:誰もが知っているシナモンは、ケチャップとも好相性
「誰もが聞いたことのあるシナモンは、さまざまなものに合わせやすく、使いやすいスパイスのひとつです。
シナモンと聞くとココアやお菓子に使うイメージが強いかもしれませんが、実はケチャップとの相性も良いんです。チキンライスやナポリタンの調理の最後に少し加えると、普段よりもコクが増しておいしいですよ」
▲いつものお茶にスパイス風味のお菓子を合わせるのもおすすめだそう。ロータスビスケットはほのかなシナモンの香りが楽しめる。
POINT4:ホットドリンクにもカレーにも使える「クローブとカルダモン」
「クローブとカルダモンがあれば、チャイやホットワインなどの定番ドリンクを作ることができます。
ちなみにこの2種類はカレーにもよく使われるスパイス。味が足りない場合にちょっとだけ足すと、風味豊かなカレーに仕上がります。
スパイスを数種類買ってみるなら、家庭で使いやすいこの2種類や、先ほど紹介したシナモンなどから試してみるのがおすすめです」
毎日をもっと楽しくする、スパイスホットドリンクの作り方5選
ここからは、スパイスを使ったホットドリンクのレシピをご紹介します。普段飲んでいる紅茶やココア、ホットミルクがスパイスを加えるだけで特別な飲み物に変身します。
すっきり気分転換したい時に。酸味がおいしいハニーアムチュールティー
「『アムチュール』とは、乾燥マンゴーをパウダーにしたもののことです。南インドではスープなどに使われています。ドライフルーツらしい爽やかな酸味と日向の匂いが特徴的です。
このアムチュールの他に、カルダモンで華やかな香りと蜂蜜でやわらかな甘みを加えます。レモンティーとはまた一味違った甘酸っぱい紅茶は気分転換におすすめです」
[材料:1杯分]
紅茶:150cc
はちみつ:小さじ2
アムチュールパウダー:小さじ1/2
カルダモンパウダー:ひとつまみ
[作り方]
はちみつとアムチュールパウダー、カルダモンパウダーを混ぜる。
1をあたたかな紅茶に入れて混ぜる。
リラックスタイムのおともに、スパイス3種の贅沢ココア
「ココアといえばまろやかな味ですが、スパイスを入れるとすっきりと大人な飲み心地になります。
さらに今回はひと手間かけてココアパウダーを煎るレシピにしました。煎ることでココアの香ばしい香りがより引き立ち、一味違ったココアが楽しめますよ」
[材料]
[A]
ココアパウダー:大さじ1と1/2
カルダモンパウダー:小さじ1/4
シナモンパウダー:小さじ1/4
クローブパウダー:少々(耳かき1杯程
度)
砂糖:大さじ1と1/2
牛乳:150cc
[作り方]
1. 小鍋にAを茶こしなどでふるいながら入れる。
2. 砂糖を加え弱火にかけ、焦がさないように混ぜる。
3. チョコレートのような艶が出てきたら、牛乳を大さじ2程度加えて練り混ぜる。(木べらなどでも良いが、泡立て器を使うとダマになりにくい)
4.砂糖が全て溶けたら残りの牛乳を加え、温まったら完成。
勉強中の子どもの夜食にも!ナツメグをかけたコーンポタージュ
「ナツメグには覚醒の効果があると言われているので、眠気を感じる時間におすすめです。朝ごはんの代わりや受験勉強をがんばるお子さんの夜食にしてみてはいかがでしょうか。
ナツメグはパウダーも売られていますが、今回はホールを使いました。挽きたては香りが豊かですので、市販のコーンスープが少し贅沢な味わいになります」
[材料]
コーンスープ(缶やパックのもの):150cc
ナツメグパウダー:ひとつまみ(ホールを削って使用)
[作り方]
1. コーンスープを温め、ナツメグを挽きかける。
一日のおわりに。ホットミルクをアニスとハーブのお酒で華やかに
「ホットミルクにアニスリキュールを加えたドリンクです。アニスリキュールとは、アニスというスパイスをはじめ、さまざまなハーブが入ったリキュールのこと。フランスのお菓子などでよく使われています。
アニスは上品で甘い香りが特徴的です。ホットミルクの優しい味わいに華やかな香りが加わり、一日のおわりのご褒美にぴったりの味わいですよ」
[材料]
牛乳:150cc
ペルノー:小さじ1~大さじ1
[作り方]
温めた牛乳に、アニスリキュールを入れる。
冬の定番ドリンク・甘酒を味変。チャイ風テイストに
「冬と言えばあたたかな甘酒。そこで甘酒にスパイスを加えたレシピを考えてみました。カルダモン・ジンジャー・シナモンを入れるだけで、チャイのような味わいを楽しめます」
[材料]
甘酒:150cc
カルダモンパウダー:ふたつまみ
ジンジャーパウダー:ふたつまみ
シナモンパウダー:ふたつまみ
[作り方]
甘酒を温め、スパイスを全て混ぜる。
スパイスドリンクで、家時間の楽しみを増やそう
いつものドリンクに加えるだけで、また違った味わいを作り出してくれるスパイスたち。ぜひ家時間で過ごすことが多くなる、冬の季節の楽しみにしてください。
【マグネットな本】未来が不安な時に、癒しをくれた一冊
『くらしマグネット』の出演者に、その人のライフスタイルに大きな影響を与え、まさに磁石のように吸い寄せられた一冊を紹介してもらうコラム「マグネットな本」。
日沼紀子さんにそんな本を選んでもらいました。
池澤夏樹・きみが住む星
「ここではないどこかへ連れて行ってくれる池澤夏樹さんの本が好きで、学生のころよく読んでいました。そして大人になってから出会ったのが、エルンスト・ハースさんの写真に池澤さんが言葉をのせたこの本です。
当時は30歳手前くらい。ちょうど自分の行く先について、迷ったり悩んだりしていた時期でした。まだ何者でもない自分に対する不安を抱えながら、半ばワーカホリックのようにがむしゃらに仕事をしていたわけですが、この本の中の『大事なものはみんな空にあります』というフレーズにとても気が楽になったのを覚えています」
スパイス調合師として20年以上の経験を踏まえたスパイスのスペシャリスト。カレーやインドだけではない、独自のメソッドによるスパイスの使い方解説に定評があり、企業研修、料理教室等を通じ、プロから初心者まで幅広く講座を行う。スパイスのサブスク「スパイス定期便」や「スパイス大学」も人気。「スパイス&ハーブ料理の発想と組み立て」(中国、台湾で翻訳)他著書多数。2月発売予定の新著も控える。
Photo_Ryumon Kagioka Interview,Text & Edit_Megumi Saito