過去に激辛ブームが何度も広まったように、辛いものには多くの人を惹きつける魅力があります。また、辛い料理を食べて得られる健康効果があることも明らかになっています。この記事では、辛いものを食べて得られるさまざまな効果についてご紹介します。
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辛い料理によく使われる辛味成分とは
辛い料理には、さまざまな辛味成分が使われており、独特の風味と刺激をもたらしています。辛味成分は料理の味を引き立てるだけでなく、健康にも多くのメリットがあるのです。
辛味を足す辛味成分とは?
辛味は甘味や酸味といった一般的な味覚とは異なり、刺激の一種とされます。辛味は味覚神経ではなく、痛覚や温覚で感じるため、実際には痛さや熱さを口の中で感じているのです。
辛味成分は大きく分けて不揮発性と揮発性の2種類に分類されます。不揮発性の辛味成分は唐辛子やコショウ、山椒などに多く含まれ、口の中が熱く感じる特徴があります。一方、揮発性の辛味成分を含む代表的な食べ物にはマスタードやワサビなどがあり、これらは鼻の奥がツーンとする感覚を引き起こします。
カプサイシンとは
カプサイシンは、唐辛子に含まれる不揮発性の辛味成分です。カプサイシンを含む食べ物は舌の感覚神経を刺激し、辛味を感じさせるのです。カプサイシンの性質は油や酢に溶けやすく、加熱しても壊れにくいため調理後も辛さが残ります。
ところで、まれに辛いシシトウが紛れていることがありますが、これはシシトウが育つ過程で何らかのストレスがかかると、カプサイシンが生成されるためとされています。
辛いものを食べるメリット
ただ美味しいだけでなく、辛いものには多くの健康効果があります。辛味成分の健康効果は古くから注目されてきました。具体的にどのようなメリットがあるか見ていきましょう。
血行促進により新陳代謝アップ
辛いものを食べると血行が促進され、新陳代謝アップが期待されます。辛味成分が体内の血液循環を活発にし、酸素供給を促進するためです。例えば、カプサイシンが含まれる唐辛子を摂取すると体温が上がり、毛細血管が拡張され血行が良くなると言われています。これにより、体内の各細胞に酸素や栄養が効率よく届き、老廃物もスムーズに排出され、新陳代謝の向上が期待できます。
冷え性改善
辛味成分の中には、冷え性の改善に効果を発揮するものもあります。特にショウガに含まれるショウガオールは冷え性改善に効果的です。ショウガオールは胃腸を刺激して血流を促進し、体を温める作用があります。そのため、ショウガは寒い季節でも体を芯から温めてくれます。一方、唐辛子が体を温める効果は一時的です。唐辛子を食べた直後には体温が上昇しますが、しばらく経つと効果は消え、逆に体温が下がることがあります。
疲労回復
辛いものは疲労回復にも役立ちます。辛味成分は体内でエネルギー生成を活発にして代謝を上げます。代謝が上がれば、老廃物が排出されやすくなり、疲労回復効果が期待できるでしょう。疲れたときに辛いスープやカレーを食べると、元気が出るという話を聞いたことがあるかもしれません。それは、辛味成分が体内でエネルギーを効率よく利用する手助けをしている証拠です。疲労回復の一環として、辛いものを適度に摂取することを検討してみましょう。
夏バテ予防
辛味成分が食欲を増進させる効果を保つため、夏バテの予防にもなると言われています。また、辛いものを食べたときにかく汗が皮膚表面の熱を奪い、体温を下げる効果も期待されます。この効果によって涼しさを感じられるため、辛い料理は夏の暑さ対策にも役立ちます。
美容効果
辛いものには美容効果も期待できます。辛味成分による発汗作用で体内の毒素が排出され、新陳代謝が活発になり、血行促進と合わせて肌の保湿や油分のキープに役立つためです。また、発汗により汗腺の活動が活発になり、肌のターンオーバーが促進されます。
辛味とは直接関係がないものの、唐辛子に含まれるカリウムや鉄分、ビタミンA、ビタミンBなども美容に良いとされています。カリウムはむくみを改善し、鉄分は血色を良くし、ビタミンAは皮膚の健康を保ち、ビタミンB群は肌の代謝を助けます。
辛いものを適度に取り入れることで、美容面でもさまざまなメリットを得られます。適量を守りつつ、積極的に辛いものを食生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
ストレス軽減と気分向上
辛味成分によって、エンドルフィンというホルモンの分泌が促されます。エンドルフィンは「幸福ホルモン」とも呼ばれ快感をもたらす作用があるため、ストレスの軽減や気分向上の効果が期待できます。
辛いものを食べると、スポーツをした後のような爽快感や幸福感が得られることがありますが、それはエンドルフィンが分泌されるためです。例えば、辛い料理を食べた後に日常のストレスが軽減されたように感じたことはないでしょうか。これはエンドルフィンの分泌による効果といわれています。
辛いものがクセになる理由とは?
辛いものが好きな人の中には、クセになっている人もいるようです。辛いものがクセになるのは単なる好みではなく、科学的な理由があります。ここではなぜ辛いものがクセになるのかを解説します。
アドレナリン分泌による興奮状態
辛いものを摂取すると、アドレナリンが分泌されます。アドレナリンが分泌されると心拍数の増加や血圧の上昇を引き起こして興奮状態をもたらすと言われています。そのため、エネルギーが一時的に増加し、活力を感じるようになるのです。
エンドルフィン分泌による爽快感
辛いものを食べると分泌されるエンドルフィンも、クセになる要因の1つとされています。エンドルフィンの作用で幸福を感じた結果、「辛いものを食べたら幸せになった」という記憶が残り、クセになるのです。
激辛料理を食べる時の注意点
辛さはほかの味覚と異なり刺激の一種のため、食べ過ぎると健康に悪影響を及ぼす可能性があります。最後に、激辛料理を食べる際の注意点について解説します。
食べ過ぎのリスク
辛いものには刺激成分が多く含まれており、過剰に摂取すると体に負担がかかります。代表的な辛味成分であるカプサイシンは、一度に大量に摂取すると喉や胃の粘膜に強い刺激を与え、健康に悪影響を及ぼします。例えば、激辛料理を食べた後に喉がヒリヒリする経験をしたことがある方も多いでしょう。これはカプサイシンの刺激作用によるものです。
さらに、ナツメグのように限度を超えて摂取すると中毒症状を起こす香辛料も存在します。どんなに美味しい辛い料理でも、適量を守って楽しみましょう。
胃腸への影響
激辛料理は胃腸に特に負担をかけます。多くの辛味成分が胃壁や腸壁を刺激し、炎症を引き起こすリスクがあるためです。具体的には、カプサイシンによる胃酸の過剰分泌は胃痛や胃もたれを引き起こす可能性があります。また、便秘や下痢の原因となることもあります。
激辛料理を楽しむ際には、牛乳やヨーグルトを事前に摂取すると効果的です。これらの食品は辛さを和らげる効果があり、胃腸への負担を軽減できます。
辛味の耐性とその影響
繰り返し激辛料理を食べると、辛味に対する耐性がつくのはよく知られています。これは、辛い料理を繰り返し口にするうちに体が辛味成分に慣れて、痛みや刺激を感じにくくなるためです。同時に、脳も辛味を刺激として認識しづらくなるため、最初は少量の辛味でも強烈に感じたものが、次第にあまり刺激を感じなくなります。
辛味への耐性がついた結果、より強い辛味を求めるようになることが多いようです。辛味による刺激が減少し、また刺激を感じたいという欲求が生じます。このような習慣が続くと、より強い辛味の摂取が当たり前となり、胃腸に負担をかけるリスクが高まります。具体的には、胃壁の荒れや、胃腸が抱える問題の悪化を招く恐れがあります。
辛いものの効果を理解して元気に過ごそう
辛いものには、血行促進や冷え性改善、疲労回復など、多くの健康効果があります。例えば、辛味成分であるカプサイシンは、体の中から温める効果があり、新陳代謝を高めて体全体の血行を良くします。しかし、辛さを楽しむ際は適量を守ることが大切です。過度な辛味は胃腸に負担をかける可能性があるので、くれぐれも無理せず食べられる範囲で楽しみましょう。