コロナ禍以降、なかなか旅行に行けてないという人も多いのではないでしょうか。久々に旅に出たい!けど一緒に行く人が集まらない……なんて悩む人は、気ままなひとり旅はいかがでしょう?
「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサーとして数々の旅の本を出す詩歩さんに、くらしマグネット読者のためのひとり旅プランを考えてもらいました。失敗しないヒケツや魅力についても聞いたので、今年こそ旅をしたい人は必読です!
MOKUJI
教えてくれるのはこの人!
詩歩さん
「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」プロデューサー。著書は累計63万部を突破し、SNSの総フォロワー数は100万人以上を誇る。 昨今の”絶景”ブームを牽引し、流行語大賞にもノミネートされた。 旅行商品のプロデュースや自治体などの地域振興のアドバイザーなどを行っている。Instagram
自分の気分で旅をアレンジできる、ひとり旅の良さ
7年間の活動のなかで47都道府県に加え、海外も50〜60か国を巡って知られざる絶景のスポットや魅力を発信し続ける詩歩さん。彼女が語るひとり旅の良さ、そして失敗しないヒケツとはなんなのでしょうか。
「まず、人に合わせなくていいことが挙げられますね。友人や家族と一緒だと、行く日程やスポットを同行者と調整する必要があります。
もちろん人と行く旅行の良さもあるんですが、ひとりならすべてが自由。気分で行く先を変えることだってできちゃいます。
より良い旅にするには事前のリサーチが大事です。特に絶景に行きたい場合はスポットによって交通機関やシーズンの限定があるので、しっかりプランを組むのがオススメ。『絶景は下調べが9割』なんです。
一度の旅行で巡るスポットの数はお好みですが、行きたい優先順位はつけておくべき。
そうしないとプランにあったスポットを全部巡れず、失敗した旅という記憶が残ってしまう場合もありえます。『こことここは絶対行きたい!』といった感じに順位をつけておくことで、焦っていろんな場所を移動することなく、心にゆとりを持って旅を楽しむことができます」
詩歩さん厳選!今行くべき国内絶景ひとり旅プラン3選
ひとり旅を成功させるポイントを聞いたところで、今度は詩歩さんがこの時期にオススメする3つの絶景旅プランをご紹介!
今回は行きやすい国内で選出してもらったので、出会いたい風景を探してみてください。
【プラン①】温泉と絶景で癒やされる愛媛県・道後温泉周辺の旅
「ノスタルジックな雰囲気の街並みと『美人の湯』とも言われる泉質が人気の道後温泉の周りには、車で1時間くらいで行ける距離に絶景が点在するエリア。
夜は温泉街を浴衣で楽しみつつ、日中は絶景を巡ることができる贅沢なプランです!」
道後温泉の絶景その1:まるで絵画の世界!「下灘駅」
「JR予讃線の下灘(しもなだ)駅は目の前が瀬戸内海!見たことはあるけど、行ったことはないという人が多いのではないでしょうか。車窓からの景色もいいので、電車で訪れるのも◎。
一日ここでぼーっとしながら、夕日が沈むのを見ていたいと思わせてくれる場所です」
道後温泉の絶景その2:海面に空が映る!?「立岩海水浴場(モンチッチ海岸)」
「空が写り込むこの光景が見られるのは松山市にある「立岩海水浴場(モンチッチ海岸)」。
夏は海水浴場として賑わうビーチですが、『①無風であること』『②晴れか曇りであること』『③干潮であること』の3つの条件がそろえば、上の写真のような光景が目の前に!干潮の時間帯はWEBで調べると出てきますよ」
道後温泉の絶景その3:まるでもののけ姫の世界「滑川渓谷の龍の腹」
「長い年月をかけて侵食された結果出来上がった滑川(なめがわ)渓谷の一番奥にある滝、通称『龍の腹』。
本当に巨大な龍のとぐろに包まれたような感覚に陥るこの場所は、写真だけでは伝えきれない雰囲気を感じることができます」
【プラン②】世界遺産登録間近!?新潟県・佐渡島の旅
「『佐渡島の金山』として世界遺産の登録がもうすぐといわれる佐渡島。登録されたら一気に観光客が増えるので、今がゆっくり楽しめるラストチャンスかもしれません。
一番の見どころはやはり金山の遺構ですが、それ以外にも海や山もあって自然を満喫できます。島には船で行くので、船旅気分を楽しめるのもポイントです」
佐渡島の絶景その1:古代の廃墟感が味わえる「北沢浮遊選鉱場跡」
「『東洋一』とうたわれた金銀の選鉱所の近代産業遺産である『北沢浮遊選鉱場跡(きたざわふゆうせんこうばあと)』。
1885年に建設されたコンクリート製の巨大な建造物は本当に見事!中に入れませんが、ツタが絡まって月日の経過を感じさせる風貌は、なんとも心をくすぐります。
夏の夜はライトアップされるので、幻想的な風景を眺めることができます」
佐渡島の絶景その2:幻想的な夕焼け「万畳敷」
「島の南西・沢崎海岸にある『万畳敷(まんじょうじき)』というスポット。夕日の時間帯に訪れると、こんな光景が見られるんです!
浅瀬なので干潮時には歩いて行くこともできるし、波がここまで来ないので写真のように水面に空が反射した光景を見ることができます。
干潮×無風×夕日の時間を狙っていくと、同じような写真が撮れますよ」
佐渡島の絶景その3:橋の上から見る海底の透明感「長者ヶ橋」
「島の南西端にかかる全長約300mの『長者ヶ橋(ちょうじゃがばし)』は高さ40mと少し怖いですが、海を眼下に見下ろす海上散歩が楽しいスポットです。
晴天の日に行くと、橋の上から海底まで見通せてしまうくらいの透明度!(この写真を撮った日は雨だったのにこの透明度でした)」
佐渡島の絶景その4:島の歴史を感じられる街並み「宿根木エリア」
「島の南端に位置する『宿根木(しゅくねぎ)』エリアは、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている街並み。建物の外壁に船板として使用されていた板が使われていて、江戸から明治時代にかけて「船大工」の街として発達した面影を今に残す貴重な風景なんです。
人がやっとすれ違えるくらいの細い道が入り組んでいて、お散歩が楽しい!公開されている民家や、カフェになっている建物もありますよ」
【プラン③】大自然を満喫できる北海道・釧路の旅
「雄大な釧路湿原とその周辺の自然を楽しむプランです。
北海道の東側エリアは建物があまりなくて、地平線まで広がる緑を眺めることができます。さらに阿寒湖の辺りにはアイヌ文化が色濃く残っていて、漫画『ゴールデンカムイ』の世界観を感じられるのも魅力です」
釧路の絶景その1:自然を一望できる「釧路市湿原展望台」
「日本最大規模の広さを誇る釧路湿原。実際に来るまでは湿原って人里離れた僻地にあると思っていましたが、なんとここは釧路市内。しかも、釧路駅から路線バスでたった40分で来ることができます。
眺望はこの見渡す限りの湿原!調べたところによると、山手線が3.5個入るくらいの広さだそうです。ここが動植物の貴重な住処となり、壮大な生態系が守られているんですね」
釧路の絶景その2:まるで映画のワンシーン!「阿寒湖の線路」
「まるで映画のワンシーンのような阿寒湖(あかんこ)の一角。場所は『ウグイ川』のほとりにあって、まるで水中を走る線路のようなノスタルジックなスポットです。線路は近隣の舟会社のものなので、作業中は近づくなど迷惑のかからないようにご注意。
阿寒湖は特別天然記念物のマリモをはじめとした豊富な自然があり、火山地域なので温泉が多く宿に泊まるのもオススメ」
釧路の絶景その3:神々しい雲海に出会える「白湯山展望台」
「雲海に続いていく天国のような世界に入り込める白湯山(はくとうざん)展望台。標高950mの頂上から少し下がったところに展望台はあります。
雲から頭を出しているのは『雄阿寒岳(おあかんだけ)』という山で、雲海の下には阿寒湖が隠れています。
朝日が登るにつれてキラキラと輝いていく雲海が本当に神々しいです」
釧路の絶景その4:満天の星空を楽しむ「摩周湖」
「世界第2位の透明度で、その青さは『摩周ブルー』と形容される摩周湖(ましゅうこ)。そのほとりには去年オープンした『摩周湖カムイテラス』があります。
テラスには湖に向かって突き出すウッドデッキとふかふかのソファーがあって、夜は満天の星空をゴロンと寝転がって眺めることができるんです」
【マグネットな本】詩歩さんを引き付けた一冊
『くらしマグネット』の出演者に、その人のライフスタイルに大きな影響を与え、まさに磁石のように吸い寄せられた一冊を紹介してもらうコラム「マグネットな本」。
詩歩さんにそんな本を選んでもらいました。
真藤順丈『宝島』
「以前から文学賞の受賞作を読むことが多いのですが、これも直木賞に輝いたことをキッカケに手に取りました。太平洋戦争時の米軍統治下の沖縄を描いた作品で、この時代の生活や苦労がありありと語られているので、リアルに当時を感じることができます。
日常的にいろんな場所を訪れますが、その土地その土地のルーツや本質を知ることで、ただ旅をするだけでは味わえない深みのようなものを感じられることを教えてくれた一冊です」
Interview,Text & Edit_Yasushi Shinohara