自然の中で開放的に楽しめるキャンプは、いま一番注目の集まるアクティビティのひとつ。でも、やったことがない人にとっては「道具の準備が大変そう」「泊まりだから天気が不安」と不安も多く、実際にキャンプをするまでのハードルが高くなってしまうもの。
そんなキャンプ初心者にオススメなのが、日帰りなのにアウトドアの魅力がギュッと詰まったデイキャンプです。そこで、今回は人気キャンパーの森風美さんに初心者向けデイキャンプ講座を開いてもらいました!
MOKUJI
教えてくれるのはキャンプ女子の森風美さん
女性向けアウトドアWEBメディア「なちゅガール」の編集長を務め、雑誌・テレビ・イベント出演など幅広い分野でも活躍中。物心がついたころには両親と一緒にアウトドア生活を始め、今は年間80泊するほどキャンプを愛する。著書に「はじめよう!ソロキャンプ(山と渓谷社)」がある。
キャンプのお供は、ボーダーコリーの「うどんちゃん」。公式サイト
デイキャンプの魅力って?
緑あふれる森の中や、澄んだ水が流れる清流のほとり、波の音が子守歌となる海辺。自然豊かな日本には、魅力あふれるアウトドア空間がたくさんあります。そうした自然の中で時間を過ごすことがデイキャンプの素晴らしさですが、他にはどんな魅力があるのでしょうか。
「自然といういつもと違う環境を楽しめる、非日常の瞬間。それがキャンプの魅力です。デイキャンプはそういったキャンプの良さから、”美味しいところ”を抽出したイメージでしょうか。
日帰りで気軽にできて、荷物が少なくて済み、自分のペースで来て・遊んで・帰ることができます。特に女性の場合、暗くなるといろいろな不安がありますが、デイキャンプなら気にすることなく心から楽しむことができます。小さなお子さん連れでも安心。これがデイキャンプの魅力だと思います」
気を付けるべき点は?
非日常空間でテンションが上がってしまうのか、ハメを外してしまう人も見かけるキャンプ場。大人として恥ずかしい思いをしないために、デイキャンプ時(もちろんキャンプ時にも)注意する点はあるのでしょうか。
「まず鉄則として、”キャンプ場”を利用することが大切です。河原や空き地で勝手にキャンプをする人をたまに見かけますが、たとえ誰もいない河原であっても確実に誰かの所有地ですから、勝手に入ってはいけません。デイキャンプであっても、必ずキャンプ場を利用しましょう。
それと、キャンプ場それぞれにルールやマナーがあるので、従うこともお忘れなく。スタッフの人の説明はきちんと聞きましょう。
デイキャンプでは日没までに撤収するのが基本です。暗くなってからだと忘れ物をしたり、ケガをしたりしてしまうので、日の入りの1時間前には片付けを始めるようにしてください」
キャンプ場の選び方は?
デイキャンプを楽しむために、肝心なのは場所選び。森さん流の選び方があるといいます。
「出掛ける前にネットでキャンプ場を検索し、レビューや行った人のブログを細かく読むようにしています。女性ひとりでのキャンプでも問題ないか、客層やスタッフの対応などをチェックしているんですよ。
ただ、明るい時間に行うデイキャンプの場合は治安に関してはあまり関係ないので、そこまでくわしく見る必要はないかもしれません。アプローチが楽か、環境的な配慮はあるか、川が近いか、それとも山の中か…お好みの場所を選べばいいと思います。
ただし、昨今のキャンプブームで予約が取れないことが増えてきました。土曜日は宿泊客が多いので、デイキャンプであれば日曜日がねらい目です!」
最低限持っておきたい道具一覧
BBQとの大きな違いは、「炭火で食材を焼いて食べるだけ」なのか、「アウトドアで過ごす時間」なのか。デイキャンプを行う場合、ある程度快適に過ごせるようキャンプ道具を持ち込むことが大切です。
今回、森さんが持参したデイキャンプ用の道具はこちら。
・タープ&ポール(タープ用の支柱)
・テーブル
・イス
・調理器具&カトラリー
・コンロ
・クーラーボックス
・飲料&食事の材料
・コット(うどんちゃんの指定席)
・ゴミ入れ
・たき火台&延焼防止用マット
「たき火台はマストではないので、作りたい料理やアクティビティ応じて用意するといいでしょう。自分がしたいことを楽しめればOKなので、読みたい本を持って行ったり、ブランケットを用意してのんびりお昼寝を楽しんだり。やりたいことを決めて、それを楽しめる道具をそろえておくといいですね」
春夏向け!お手本キャンプコーデ
オレンジ色が好きだという森さんの本日のファッションは、自然を感じさせる穏やかなオレンジコーデ。
デイキャンプの舞台はアウトドア。蚊やアブといった虫もいれば、ヘビや山ヒルといった危険な生物もいないとは限りません。安心安全にデイキャンプを行うために、どのような点に注意するべきなのでしょうか。
「日差し対策や上から落ちてくる木の枝や虫から頭を守るためのキャップやハットは必需品です。トップスは寒暖差に合わせて脱ぎ着しやすいシャツタイプがおすすめ。日焼け&害虫予防のために、長袖・長ズボン・足首が隠れる長さの靴下を着用しましょう」
「汚れても良い格好がマストですが、どうしてもスカートが穿きたい!ということであれば、厚手のタイツ+靴下で露出を防ぐといいと思います。足元はスニーカーがマスト。川沿いに行く場合は、つま先が隠れるタイプのマリンシューズなど、足にフィットするサンダルを選ぶといいですよ!」
いよいよ実践!デイキャンプの流れ
ここからは実際の流れを森さんがレクチャー。自分好みのデイキャンプを想像しながら見てみましょう。
①大きなギアを設営する
「キャンプ場内で場所を決めたら、タープやテントを設営します。
どちらも風で飛ばされやすいので、ペグ打ちはしっかりと。また、周囲のキャンパーの邪魔にならないように注意しましょう」
②小物類を設置する
「タープを張り終わったら、テーブルやイス、クーラーボックスといったギアをレイアウトしていきます。
こうしたギアは、気分を盛り上げるための大切なアイテム。好きな物に囲まれる休日はストレス解消につながります!」
③すぐに食べられる「カプレーゼ」を作る
「設営が終わったら、簡単に作れてサクッと食べられるおつまみ系アイテムを用意します。
今回はカプレーゼを。小さめのトマトとモッツァレラチーズを交互に並べて、オリーブオイルと塩、コショウを振るだけ。簡単なのにおしゃれでアウトドアにぴったりです! 余ったトマトとチーズは別の料理に使いまわします♪」
② ①を交互になるよう皿に盛り付ける
③上からオリーブオイルを流しかけ、塩こしょうする
④お好みでバジルをのせて完成
④火を起こす
「たき火を使う料理を作りたいので、自分&周囲のタープやテントに火の粉が飛ばない場所を選んでセットします。芝生や枯れ草がある場所など地面の状態によって、延焼防止用のシートを敷きましょう。
私が火を起こすのに使っているのは『文化たきつけ』。火が付きやすくコスパが良いのでおすすめです。
たき火をするときは、細かい薪から燃やし始め、最初は火が付きやすく火力が高い針葉樹(スギ、マツ、ヒノキなど)を、次に燃焼時間が長い広葉樹(ナラ、クヌギ、カシなど)を燃やすようにします。山火事や小さい子どもの事故を防ぐため、たき火を始めたら目を離さないよう注意してください」
⑤たき火で仕込む「ローストビーフの簡単トルティーヤ」を作る
「たき火が安定したら次の料理に取りかかります。今回作るのはローストビーフのトルティーヤ。
ちょっぴり手間はかかりますが、いつもとは違うゴージャスなごはんは、デイキャンプを盛り上げてくれます!今日はカセットコンロと家のフライパンで作りますが、スキレットを使ってたき火調理をしてもいいです。余ったカプレーゼの具材を入れても美味しいですよ」
【材料(2人分)】
・トルティーヤ:6枚
・牛もも肉ブロック:200g
・玉ねぎ:1/4個
・サニーレタス:6枚
・シーザーサラダドレッシング:適量
・オリーブオイル:大さじ2
・塩、黒こしょう:適量
【作り方】
①牛もも肉を常温に戻し、全面に塩こしょうを振る
②フライパンでオリーブオイルを熱し、中火で牛もも肉全体に焼き目をつける(1面につき2分ほど)
③肉を取り出し、アルミホイルで2重に包み、たき火台の下で40分ほど置く(たき火をしない場合はふきんに包み1時間ほど置く)
④玉ねぎと出来上がったローストビーフを薄切りにして、すべての具材を皿に並べる
⑤トルティーヤをフライパンで軽く温める
⑥好みの具材を乗せてドレッシングをかけたら完成
⑥「焼きバナナ」で食事はシメ!
「続いて食後のデザートは焼きバナナ。
チョコレートのほうは、まんまチョコバナナの味に。オリーブオイルのほうは、甘い物が苦手な人にオススメの大人っぽい焼きバナナになります」
【材料(2人分)】
・バナナ:2本
・板チョコ:5かけ
・くるみ、マシュマロなど:お好みで
・オリーブオイル:適量
・塩、黒こしょう:適量
【手順】
①バナナに包丁で皮ごと縦に切れ目を入れる
②1本は板チョコを割って差し込む
③アルミホイルをバナナの形に合わせてお皿のように包む
④網や五徳の上に乗せ、チョコが溶け全体が黒っぽくなったら皿に盛り付ける
⑤チョコのほうにはお好みでくるみやマシュマロをトッピング、オリーブオイルのほうには塩や黒こしょうで味付けしたら完成
「今回は撮影のために一気に料理を作りましたが、出来上がった料理から順番に食べていくのがデイキャンプのコツ。カプレーゼを食べてひと息ついて、焚き火を楽しみながらローストビーフを仕込み、焼き上がったらアツアツのうちに食べ、その後デザートでシメる。その場の流れを楽しむのも、デイキャンプの魅力です!
それと、気付いた人もいるかもしれませんが、使った調味料を塩、こしょう、オリーブオイルの3つだけに絞り、持ち物を減らしていることも注目してほしいポイント。せっかくのデイキャンプなので、手間暇をなるべくかけず気楽に行いましょう!」
⑦自分時間を楽しむ
「食事が終わったら、まったりタイム。本を読んだり、うどんちゃんと散歩をしたり、時にはスマホをポチポチしたり、好きなことをして過ごしましょう。自然の中で過ごすと、不思議と落ち着くんですよね」
⑧撤収の1時間前になったら片付け開始!
「まずはたき火を消しましょう。燃え残りは炭壺に入れて持ち帰るか、キャンプ場のルールに従って処理してください。林の中に放置したり、川に流したりしないようにしましょう。
その後、イスやテーブル、タープなどを片付けます。ゴミは必ず持ち帰りましょう。もちろん、家に帰るまでがデイキャンプです。楽しい思い出だけを残すようにしてみてください!」
この夏の思い出作りにデイキャンプはいかが?
自然の中で伸び伸び過ごすデイキャンプは、心も体もリフレッシュさせてくれるうれしいイベントになります。
親しい友人と、人生のパートナーと、デイキャンプに出かけて楽しい思い出をたくさん作ってみませんか?
Photo_Koji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara