家にいる時間が自然と多くなる今日この頃。お部屋の中を観葉植物で充実させて住み心地を良くしたいと考える人も多いでしょう。
でも、相手は植物とはいえ命を持つ“生き物”。長く愛してあげるために、自宅に上手に取り入れるために知っておくべきポイントを取材しました。フラワー&グリーンスタイリストのさとうゆみこさんのご登場です。
MOKUJI
- 1 教えてくれるのはこの人
- 2 緑と暮らす、そのメリットは?
- 3 狭い家でもグリーンを楽しむことはできる?
- 4 自宅時間が多いからこそ、取り入れるべき?
- 5 グリーン初心者のあるあるな失敗
- 6 グリーンと上手に付き合うヒント
- 6.1 ヒント1:手間がかからない品種を選ぶ
- 6.2 ヒント2:昔から育てられてきた観葉植物は育てやすい
- 6.3 ヒント3:うっかりさんには多肉植物がぴったり
- 6.4 ヒント4:お店の“どこに置いてあるか”をよく見る
- 6.5 ヒント5:5号鉢サイズが育てやすい
- 6.6 ヒント6:購入時の鉢を活かす
- 6.7 ヒント7:部屋を彩るなら大きな鉢やグループを作る
- 6.8 ヒント8:まとめ買いで責任感も育てる
- 6.9 ヒント9:日当たりには要注意
- 6.10 ヒント10:置き場所のローテーションを心掛けて
- 6.11 ヒント11:とにかく、よく“見る”こと
- 6.12 ヒント12:吊り下げタイプの鉢で部屋を立体的に
- 6.13 ヒント13:棚に並べてアクセントに
- 6.14 ヒント14:“ハレ”の日だけ室内に飾る
- 6.15 ヒント15:日当たりが悪い部屋には日陰に強い植物を
- 6.16 ヒント16:そろえておくべき道具
- 7 おわりに
教えてくれるのはこの人
さとうゆみこさん
フラワー&グリーンスタイリスト。「green & knot」主宰。インテリアショップ「IDÉE」やフラワーショップで経験を積み、専門学校の講師を経てフリーランスに。フラワーコーディネートやグリーンアドバイザーとして、また、空間スタイリングなど、植物に関わるあらゆるジャンルで活躍。フラワーアレンジメントなどのレッスンも定期的に開催中。
Instagram:@yumikosatooo
公式ブログ:https://malus.exblog.jp
緑と暮らす、そのメリットは?
「お部屋の中で育てることができる観葉植物って、生命や自然をすぐ近くで感じることができるんです。自然というのは本当に素晴らしく尊いもので、私たちがどんなにがんばっても自然には勝てない。そう思い、自分自身を見直すことでとても謙虚な気持ちになれるし、気持ちが落ち着いてきます」
――何気なく暮らしていると、自然を感じることって少ないですよね。
「もちろん、緑は見た目に美しく、見ているだけで幸せな気持ちになれる、ということもあるでしょう。私自身は植物のことを“インテリア”として捉えることはないのですが、生活空間にあることでたくさんの喜びを植物から受け取ることができます」
――緑を見ると、不思議と心が落ち着きますよね。
「そうなんです。それが人が持つ自然に対する当たり前の感情なのかもしれませんね。触れ合うことで勇気がもらえるし、気持ちを癒してもらえる。仕事一筋に生きてきたビジネスマンが、定年退職後に突然畑を耕して植物を育てるようになるじゃないですか。あれも人としての習性なのかもしれません」
狭い家でもグリーンを楽しむことはできる?
――ところで、日本に多くある狭い部屋の中でもグリーンを楽しむことはできますか?
「もちろんです。植物は光合成をし成長する生き物なので、日光が当たる窓辺があれば、どんな部屋でも育てることができます。ただし、植物はそれぞれに多彩な性質を持っています。直射日光が大好きなものもあれば、逆に強い光が苦手なもの、お水が大好きなもの、風が好きなもの…それぞれの特徴と自分のライフスタイルに合った植物を選ぶことで、長く付き合うことができるでしょう。植物と暮らすことで、狭いお部屋の中でも四季の移り変わりを感じることができますよ」
自宅時間が多いからこそ、取り入れるべき?
――コロナ禍の中、自宅で過ごす時間が増えています。やはり植物を取り入れたほうがいいのでしょうか?
「心を落ち着かせるためにも、暮らしの中に植物を取り入れることをおすすめします。自宅にいられる時間は、そもそもが贅沢なもの。その時間をより充実させるためにも、お気に入りのグリーンに囲まれる暮らしを楽しんでみてほしいですね。
今回の新型コロナウイルスもそうですが、すべては“自然”の起こす現象。自然はただそこにあるだけではなく、脅威にもなる。そうした自然の強さやすごさを感じるためにも、緑を身近に置いておくことは良いと思います」
グリーン初心者のあるあるな失敗
――初心者はどのような点に気を付けるべきですか?
「そうですね。あるあるでいうと、ちょっと元気がなくなってきたかも?というときに、さらに水やりを増やしたり、肥料をあげてしまう人が多いですね」
――肥料をあげたら元気になるかと思っていました。
「風邪を引いていて食欲のない人を、焼き肉屋に連れていくようなものなんです(笑)。
肥料は成長が盛んなときに与えるものなので、調子が悪いときには控えます。それよりもまずは、受け皿に水がたまりっぱなしになっていないか、光の量が足りているのかなど、現状がその植物の好む環境にあっているのかを確認してみましょう」
――枯らさずに長く楽しむために、最も気を付けたほうが良いことはなんでしょうか?
「できれば毎日よく観察してあげること、そして植物の性質を知ること。人間だってそうですよね。お互いを深く知ることで、長く付き合うことができる。
植物を育てるときは、まず名前や原産国を調べてみてください。原産国が分かると、どのような環境を好むかがなんとなく想像できると思います」
グリーンと上手に付き合うヒント
ここからはさとうさんに教えてもらった、自宅で植物と一緒に暮らすための役立つヒントを紹介していきます。
ヒント1:手間がかからない品種を選ぶ
「育てやすい品種のものを選ぶ。これが初心者におすすめのテクニックです。生活の負担になるくらい手間がかかる植物を選んでしまうと、あとあと辛くなってしまうだけ。まずは簡単に育てられるものから始めてみましょう」
「シダ類は水切れさえ気を付ければ、強い性質でフレッシュな雰囲気が好きな人にはおすすめです。一時的に枯れてしまっても葉を切り戻せば再生してくれます。
ゴム科の植物も育てやすさは抜群です。ウンベラータなどのゴムの木は大きな鉢植えで置くほうが多いですが、あまり大きすぎると、環境にあった場所に移動できなかったり世話がしずらかったりするので、選ぶ大きさにも考慮しましょう。
植物の特性とともに、自分自身の性格を考えて選ぶと、失敗が少なくなる思いますよ」
ヒント2:昔から育てられてきた観葉植物は育てやすい
「ポトスやアイビー、ゴムの木といった、聞き馴染みがあったり見たことのあるような昔からある植物は育てやすいものが多いんです。ネットで調べるとすぐに手入れなどの仕方が出てきます。まずはショップの店員さんに聞いてみるのもいいでしょう」
ヒント3:うっかりさんには多肉植物がぴったり
「水をあげるのを忘れてしまいそう、という不安がある人は多肉植物がおすすめ。体内に水分を貯めることができ、他の植物に比べて乾燥に強いので安心ですよ」
ヒント4:お店の“どこに置いてあるか”をよく見る
「ホームセンターなどに行くと分かりやすいと思うのですが、屋外向きの植物は屋外で、屋内向きの植物は屋内で売られています。植物には個性があり、直射日光が苦手なものもあるので、どこで売られているかを見ると、部屋の中で育てるのに向くかどうかが分かります」
ヒント5:5号鉢サイズが育てやすい
「愛らしいから、手間がかからなそうだからと小さい鉢を選ぶ人もいますが、小さいと水のストックが小さい分こまめな水やりが必要になります。
ただ軽いので、移動しやすくこまめに世話ができるのはいいですね。逆に大きすぎると日当たりの良い場所を確保するのも大変になり、安易に移動できずに環境を変えてあげることが難しくなります。
初めてなら5号~7号鉢程度(直径15~21cm程度)が小さすぎず、大きすぎずおすすめです」
ヒント6:購入時の鉢を活かす
「私は購入したときのプラスチックの鉢をそのまま、できるだけ植え替えることなく育てるようにしています。そうすると外側の鉢や花瓶だけを取り換えて、雰囲気を変えて楽しむことができるようになります。何より鉢がプラスチックのままだと軽いので、移動をさせるときに楽ちん。外に出して水をあげ、水が切れたら中に戻すという作業が軽々とできるようになります」
ヒント7:部屋を彩るなら大きな鉢やグループを作る
「グリーンによって部屋の雰囲気を変えたい!というのであれば、大きなサイズの鉢植えが合います。ただし、鉢が大きいということは重さもそれなりなので、日当たりが良い場所を選びましょう。そうした手間は取りたくないけれど存在感のあるグリーンが欲しいというのであれば、小さい鉢をたくさん並べるのも手。ひとつひとつは小さい鉢でも、並べることでインパクトが出ます」
ヒント8:まとめ買いで責任感も育てる
「気に入った植物をひとつだけ買うのではなく、まとめて5〜6個くらい買いそろえると、責任感が生まれて、丁寧なケアを続けることができるはず。まとめて並べるとインパクトが出て、部屋の雰囲気も良くなりますよ。見た目でお気に入りのものを1〜2個、さらに育てやすそうなものを2〜3個。そんな風に選ぶと、上手く育てることができると思いますよ」
ヒント9:日当たりには要注意
「植物には品種によってさまざまな特性があり、日当たりを好むものもあれば、強い日差しが苦手で葉っぱが焼けてしまうものもあります。植物がもともと育った環境の違いが関係しているので、必ずどのような日当たりを好むか確認しておきましょう。いわゆる観葉植物の多くは、直射日光が当たりすぎず、ほどよく日差しを浴びられる場所を好みます。日当たりの良い窓際に置き、レースのカーテンなどで遮光するといいでしょう」
ヒント10:置き場所のローテーションを心掛けて
「日差しの少ない場所にグリーンを飾りたい場合は、置いたままにせず、いろんな場所にローテーションさせ、日光が当たる時間も与えてあげましょう。そのためにも、複数の植物を育ててあげるといいですね」
ヒント11:とにかく、よく“見る”こと
「植物は人間と違って、どんなに具合が悪くても声を上げることはできません。なので、私たちが植物をよく見てあげることが大切なんです。葉っぱが乾いたり縮んだりしていないか、土の表面が乾いていないか、元気があるように見えるかどうか、そうしたことを日ごろから気にかけ、マメに手をかけてあげてください」
ヒント12:吊り下げタイプの鉢で部屋を立体的に
「カーテンレールなどを使って鉢を吊り下げるようにして飾ると、おしゃれなインテリアとして活躍してくれます。垂れ下がるタイプの品種なら、大きな鉢を置いたのと同じような存在感を感じることができるのでお試しあれ」
ヒント13:棚に並べてアクセントに
「お部屋の棚に置く飾り方も目につきやすい高さにグリーンが見えてGOOD。棚からあふれんばかりに垂れ下がるグリーンの愛らしさといったら!狭い部屋でも、きっと快適で居心地の良いお部屋に変えてくれますよ」
ヒント14:“ハレ”の日だけ室内に飾る
「日差しが好きな植物を選び、普段はベランダで元気よく育てておき、“ハレ”の日(来客がある日や誕生日などの特別な日)だけお部屋の中に入れて楽しむというのも、狭いお部屋でグリーンを楽しむテクニックです」
ヒント15:日当たりが悪い部屋には日陰に強い植物を
「窓から光が入りにくいお部屋の場合は、日陰が強いシダ類などの品種を選ぶのがコツ。ふわっと広がるように生えるので、お部屋に柔らかい雰囲気をもたらすことができます」
ヒント16:そろえておくべき道具
「日用品で代用できるので特に必要ありませんが、じょうろはさし口が細く長いものがインドアの場合はおすすめ。それぞれの根元にこぼれずに集中して注げるためです。冬の霧吹きは土ではなく、葉っぱの表面を潤しましょう」
おわりに
手間はかけなくとも、愛情をもって接することで、グリーンとの暮らしが深く楽しくなっていくことが、さとうゆみこさんのお話から伺うことができました。
植物との暮らしは、あなたの心を、そして人生をきっと豊かにさせてくれるはず。お部屋に植物を取り入れて、自然の力に癒されてみましょう。
Photo_Yui Fujii(Roaster) Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara