暮らしの中に潤いをくれる植物。とはいえマンションで暮らしている方の多くがスペースが限られ、思ったように植物を楽しめていないかもしれません。
そこで今回は、省スペースで作れて飾れる、愛らしいミニサイズの多肉植物やサボテンの寄せ植えの作り方をお届けします。
MOKUJI
育てやすい上に見た目もかわいい。多肉植物の魅力
作り方を教えてくれたのは、2004年より多肉植物やサボテンの専門ストア「solxsol(ソルバイソル)」を営んでいる、松山美紗さん。
多肉植物に魅了され、サボテン専門店にて3年間修業した後に自身のお店の運営をはじめたそうです。松山さんのご自宅には、至るところに飾りやすい小さなサイズの鉢が並んでおり、植物と楽しく暮らしている様子が伝わってきます。まずはそんな松山さんに、多肉植物やサボテンの魅力をお聞きしました。
松山さん
「私が思う多肉植物の魅力は、ビジュアルの可愛さと育てやすさです。私は観葉植物やエアプランツよりも、多肉やサボテンの方が育てやすいと感じています。多肉植物は他の植物に比べ、水やりの回数が少なく、水きれも良いんです。
なのであまり育てたことがない方にもおすすめしたい植物ですね」
選ぶコツはとにかく自分が気に入ること。手頃なものは扱いやすさも◎
愛らしい上に初心者でも扱いやすい多肉植物やサボテン。今度は選び方について教わります。
「ホームセンターや身近な園芸店で数百円程度で売られているものは、はじめての方でも育てやすいものが多いです。逆に扱いが難しいものは専門店で高値で取引きされています。
なのであまり育てたことがない方は、まずは手頃な値段のものからはじめてみてください。
その他選び方のおすすめは、難しく考えず、とにかく自分が気にいること。ペットを育てるのと一緒で、水が足りていないかな?日光不足かな?と、様子を見て手間をかけるためにはやっぱり愛情が必要不可欠。興味を持ってあげないと植物は育ちません。
形がかわいいと思えたものや、色の雰囲気が好きなど、琴線に触れたものを自由に選んでください」
専用の鉢を買わなくても作れる。瓶やマグカップで作る寄せ植え
専用の鉢もステキですが、新しく鉢を用意するのも使っていない時の収納場所を考えるのもひと手間かかります。
もっと簡単に、けれどもまるで雑貨を飾るようにインテリアの一部として飾れるものが欲しい、そんな思いを松山さんにお伝えしたところ、使っていないマグカップやジャムの空き瓶、ホールトマトの空き缶などを鉢として使用するアイデアを紹介いただきました。
「お子さんと作るなら、缶にシールを貼るのもおすすめ。より作ったものに愛着が湧くのではないでしょうか」
「缶の場合は、手を切らないように縁をマスキングテープなどでコーティングすると扱いやすいですよ」
10分で作れる!多肉植物とサボテンの寄せ植えの作り方
それではここからは実際の作り方をご紹介します。
準備するもの
1. 瓶や缶など鉢の代わりになる容器(お好みのもの)
2. 園芸用の土
3. ピンセット(指に針が刺さらないようにサボテンに使用)
4. 好みの多肉植物やサボテンの苗(2〜3種類)
5. 新聞紙など、敷けるもの
- 土をすくえるもの(ティースプーン・スコップ・移植ゴテなど)
「瓶などを鉢にする場合は底に穴が空いていないため、水きれについて少し配慮しないと根腐れに繋がってしまいます。缶や琺瑯のコップなどであれば、底に穴を開けてしまうのも手。
あとは、土選びに気をつけてみてください。今回は通気性や排水性に優れたブレンドされた土を使用しました。私のお店でも購入いただけますが、根腐れ防止剤を混ぜる方法もあります。
肥料は大きするために使うものなので、ミニサイズをキープしたいのあれば必要ありません。今回ご提案するのはサイズアップを想定していないやり方のため、肥料は使いませんでした」
根詰まりを防ぐひと手間。思い切って根っこをカット
「材料が揃ったら、まずは苗の準備から。ポットから苗を抜くと、ぎっしりと根が詰まっていることが多いと思います。この根っこ、思い切って3分の1ほどを残してカットして大丈夫です。茎から遠い下の方の根は、そもそも水も吸っていないし機能していない場合がほとんどですから。
次に、前をどっちにするのか、苗の配置を考えます」
ウォータースペースに配慮しながら、土を入れる
「配置を決めたら、今度は土を入れて植えていきます。まず鉢に土を入れ、その上に苗をセット。この時、鉢の縁ギリギリまで土を入れないように。上に5mm〜1cmぐらいの空きスペースを作るようにしてください。ウォータースペースと言い、水あげをした際に水が溜まる場所になります。
そして残りの苗を植えるスペースも空けておいてくださいね。
その他注意点としては、多肉植物の葉はポロっと取れやすいのであまりさわらない方が良いです」
隙間なく土を入れたら、完成!
「空けておいたスペースに2つめの苗を植えます。土がスカスカにならないように、鉢を1cmほど浮かせて何度かトントンと下に落としてみてください。土の密度が上がります。
足らなかったら上から土を足し、あっという間に完成です」
多肉をすくすく育てよう。長持ちの秘訣4選
せっかく自分でお気に入りのものを選んで作った寄せ植えだからこそ、上手に育てて長持ちさせたいもの。そこでここからは育て方のコツについてご紹介します。
1.陽が当たる場所に飾った方が、生き生き育つ
「飾るのは窓際などの陽がよく当たる場所がベストです。今回作ったものはサイズが小さいので、窓の縁に置いても良いかもしれませんね。
その他窓際にスツールや台などを置いて飾るのもおすすめです。その際はカーテンが陽の光の邪魔にならないよう、カーテンの向こう側に置くようにしてくださいね」
▲左:日光をあまり浴びずに育ったもの。右:日光をたくさん浴びて育ったもの。太さや表面の張りに差が出ています。
2.水は10日に1回が目安
「1回の水やりの量は、鉢の半分か3分の1が浸る程度。頻度は10日に1回くらいが目安です。とはいえ目安なので、できる限りで良いので様子を見てあげてくださいね。
例えば葉っぱの張りが十分だったり土の表面が湿っていたりしたら、水はあげなくて大丈夫です。
逆に、鉢の中の土が全部乾いたら水をあげるタイミング。とはいえはじめてだと全部乾いたのかわかりづらいですよね。そのため育てるのがはじめての方は、土が全部見える瓶に植えるのも手だと思います。
あとは夏は注意が必要。夏は多肉植物が休む時期なんです。そのため暑いだろうと思ってどんどん水をあげてしまうと、うまく休むことができず、ダメになる原因になってしまいます。
暑い時期は与えた後の水がお湯にならないように、涼しい夜を見つけて通常よりも少量の水を与えるのが上手に育てるためのコツです。逆に冬は朝にあげて、水の温度が下がりすぎないようにすると良いですよ」
3. 伸びたら思い切ってカットする
「フォルムをキープしたり、サイズが変わらないようにしたりするためには、定期的にカットをするのがおすすめです。カットは、下から3分の1くらいのところが目安。カットしたものは挿木にもできますので、根が生えてから別の鉢に植えて増やしても良いと思います。
ちなみに多肉植物は切り口が乾くと根が生えます。そのため挿木にしたい場合は、水にはつけないでくださいね」
4. 1~2年毎に植え替えを。鉢を大きくする必要はなし
「根詰まりを起こしてしまうので、1〜2年毎に植え替えをするのがおすすめです。植え替えの際には寄せ植えを作った時と同様に、根をカットしてください。
その他にも、バクテリアなどをきれいにするために鉢を洗い、そして土を新しいものに変えた方が、多肉やサボテンを健康的に保てます。
特に大きくしたいという希望がないのであれば、鉢のサイズは変えなくて大丈夫です」
眺めて楽しい育てて愛しい、多肉とサボテン
多肉植物とサボテンの寄せ植えの方法をご紹介しました。自分で作り、そして育てたものは愛着もひと塩。インテリアだけではなく、心にも彩りを添えてくれるのではないでしょうか。誰でも簡単に作れますので、ぜひ試してみてください。
マグネットな本
「庭仕事の愉しみ」を味わう1冊
庭仕事の愉しみ
「『車輪の下』や『デミアン』などの代表作で知られている、ドイツ生まれの小説家ヘルマン・ヘッセのエッセイ集です。
庭仕事を瞑想とし、人生の後半を生きたヘッセ。このエッセイを通して、きれいごとではない土仕事のあれこれや、老いていく現実なども交えて庭仕事の尽きぬ愉しみを伝えてくれています。
彼の感性の豊かさが、勿論この庭仕事で養われていったのでしょう。詩と絵とエッセイ、何度読んでも、豊かで穏やか、そして幸せな気持ちにさせてくれます。植物や自然を愛する純粋な気持ちに共感できる大好きな本です」
松山美紗(まつやまみさ)
多肉植物専門ストア「sol x sol」運営
多肉植物の栽培を手がける専門家。オリジナルのアレンジをオンラインで販売。また、不定期で実店舗「solxsol HOMESTORE」を埼玉・桶川市にオープンしている。「はじめての多肉植物栽培」(パイインターナショナル)他、著書多数。https://www.solxsol.com
Photo_Eri Kawamura Interview,Text & Edit_Megumi Saito