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そもそもお月見とは?
秋の夜に名月を見て楽しむ風習
お月見は、現在の暦の9月から10月上旬に訪れる、秋の名月を楽しむ風習です。
月が見える窓際や縁側に月見飾りを置き、美しいお月様を見て楽しむと同時に、収穫に感謝をする、というのが現在の正式な楽しみ方。
始まりは、さかのぼること平安時代。中国から「観月(かんげつ)」と呼ばれる宴の風習が伝わったことがきっかけと言われています。当時は貴族を中心に、船上で月を眺めながらお酒を飲み、管弦や詩歌を楽しんでいたそうです。
やがて江戸時代になると、その風習が庶民にも浸透し、収穫の感謝や来年の豊作を願う意味が込められた行事として根付き、今日に至ります。
異名はさまざま
お月見には「中秋の名月」「十五夜」など、様々な呼び方があることを知っている方も多いのではないでしょうか?もともと、お月見は旧暦の8月15日の夜に行われていました。その旧暦8月15日の夜のことを「十五夜」、その日に見える一年で最も美しい月のことを「中秋の名月」と呼ぶことから、今も色々な呼び方があるのです。
2023年のお月見は9月29日(金)
今年のお月見の日は、9月29日(金)です。金曜日はちょうど、お花の仕入れ日。これからご紹介するお花たちを新鮮な状態で手に入れることができるので、ぜひ当日はお花屋さんに立ち寄ってみてください。
お月見におすすめのお花
これまで、お月見の日に飾るお供え物はススキが王道でしたが、最近はお花も一緒にお供えして楽しむという方が増えてきました。そんなお月見の日におすすめのお花を紹介します。
ススキ
◆お月見といえばススキ
お月見の日にススキを飾る理由には、諸説あります。最もポピュラーな理由としては、「秋に収穫の時期を迎える稲穂に見立てて、収穫の感謝のお供え物をする」というもの。また、切り口が鋭いので、邪気や災いを除く魔除けにもなるとされています。
◆月の光に照らされて輝く穂先が美しい
普段は主役になることが滅多にないススキですが、お月見の日にその美しさに気づく人も多いのではないでしょうか。その特徴はなんと言っても光沢のある美しい穂先。月の光に照らされて輝く姿は、一年に一度、この日だけの楽しみです。
◆お花屋さんでも売ってます
ススキといえば、空き地や公園など野生のイメージがある方が多いかもしれませんが、お月見の時期になると、お花屋さんに綺麗な品種が出回ります。毛がふわふわしてきたススキも可愛らしいですが、せっかくの機会なので、お花屋さんに出回っている毛並みが美しいススキを楽しんでみてください。
ピンポンマム
◆まるでお月様のようなお花
「お月見のためにあるお花なのかな?」と思ってしまうほど、まるでお月様のような、黄色や白のまんまるのお花。実は、マム(菊)の一種である、ピンポンマムというお花なんです。ちょうど9月は一年で最もマム(菊)が旬の季節。もともとお月見のお供え物には、月に見立てたものをお供えするという風習があります。ピンポンマムはそれにぴったりのお花です。
◆別名ポンポン菊。年々人気の品種
ピンポンマムは、別名ポンポン菊とも呼ばれています。お月様のようなまんまるの品種がお月見では主流ですが、半球体の品種もあり、そちらは秋にぴったりのくすんだかわいい色味もたくさんあります。
明るすぎるお花は好みではないという方は、こちらの品種がおすすめです。
リンドウ
◆深い青紫色が夜空のよう
深い青紫色、慎ましく静けさを感じる花姿。お月様のようなピンポンマムと一緒に飾ることで、まるで秋の夜空のように見えてきます。リンドウの深みのある色とマムの明るい色のコントラストが美しく、お月見の花飾りを一段と魅力的にしてくれますよ。
◆敬老の日にもお馴染みの縁起の良いお花
敬老の日にお馴染みのリンドウ。秋に旬を迎えるお花で、特に和風の花生けには欠かせない存在です。花自体の縁起も非常に良いので、お月見の文化にもぴったりのお花です。
その他
お月見では、秋に美しく咲く「秋の七草」をお供えすると良いとされてきました。秋の七草とは「ススキ」「ハギ」「クズ」「ナデシコ」「キキョウ」「オミナエシ」「フジバカマ」です。これら秋の七草を中心に、お月見の花生けに添えたいその他のお花も紹介します。
◆フジバカマ(藤袴)
蕾のような小さな花をたくさんつける藤袴。慎ましくありながらも、一輪添えるだけで他のお花をさらに美しく引き立て、華やかにしてくれます。
◆オミナエシ
鮮やかな黄色い小花と茎が印象的なお花。漢字では「女郎花」と書きます。美しい女性も圧倒させるほどの可憐な花、という意味合いから名付けられたそうですよ。万葉集や源氏物語にも多く登場します。全体をぱっと華やかに、明るい印象に切り替えてくれるお花です。
◆ワレモコウ
こちらは秋の七草ではありませんが、秋の花生けに欠かせないお花です。茶色に近いえんじ色、卵の形のような小ぶりの花を咲かせます。
地味な印象があるかもしれませんが、味わい深い、秋の風情を感じられるお花です。洋花だけでなく、和花にもよく合うので、マムやススキ・リンドウにもぴったり。「派手にはしたくないけど、何か添えたいな」というときにぜひ選んでみてください。
お月見におすすめの器とお花の飾り方
お月見におすすめの器
◆素材は和風がおすすめ
和花が多いので、和の雰囲気に合う素材の花器を選ぶのがおすすめです。特におすすめの素材は、陶器と木製。陶器は、艶のある素材だと上品で高貴な印象に、マットな素材だと落ち着きのあるしっくりとした雰囲気に。銀色のマットな素材であれば、金属の器もおすすめです。月の光も取り込んで、花を美しく演出してくれます。
◆食器を花器にするもの粋でよし
お月見の花の楽しみ方としておすすめなのが、食器を花器にして花を生けること。花用の器ではないからこそ、いつもとは違った雰囲気の花生けを楽しむことができます。陶器の食器に親しんだ日本で、和花だからこそ楽しめる花の生け方です。後ほど紹介する、お月見の食事の食器と合わせて生けてみるのも素敵です。
お月見におすすめの生け方
◆シンプルに水生けを楽しむ
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シンプルにお花を楽しみたい方は、花瓶に水を入れてさっと生ける、水生けがおすすめ。長細い花器に、ピンポンマム・リンドウ・ススキを一輪ずつ生けるだけで様になります。
◆アレンジメントで花あわせを楽しむ
お花をボリューミーに生けて楽しみたいという方は、口の広い浅めの器にフローラルフォーム(オアシス)を入れて、アレンジメントを楽しんでみましょう。アレンジメント用のフローラルフォーム(オアシス)は、ダイソーなどの100円ショップでも手に入れることができます。また、水を張った器の底に剣山を置けば、プチ生け花を楽しむことも出来ますよ。
花と一緒に楽しみたい、お月見の食事と小物
お月見を、食事でも楽しむ
◆お月見といえば、やっぱりお団子
お月見の際には、月に見立てたものをお供えして収穫に感謝するという習慣があります。その代表格は、やっぱり月見団子。月見餅とも呼ばれます。お供えをしたお団子を食べることで、月の力を分けてもらうことができ、健康や幸せを得ることができると考えられているそうですよ。
◆和菓子の最中とお茶
平安時代のお月見の宴では、餅を焼いた「最中種(もなかだね)」に餡を挟んだ和菓子が好んで食べられていたそう。その和菓子が中秋の名月に似ていることから「最中の月」と呼ばれはじめ、それが今の最中の名前の由来になったと言われています。
◆月見蕎麦を風情に楽しむ
月にちなんだ食事を楽しむなら、月見蕎麦がおすすめ。季節の変わり目なので、気温に合わせて温かいお蕎麦と冷たいお蕎麦を選べるのも嬉しいですよね。
◆秋の収穫物を楽しむ
収穫に感謝をする日だからこそ、この時期に収穫を迎える里芋・柿・栗などをお供えして頂くのも、良きお月見の楽しみ方。料理としては里芋の煮物や栗ごはん、デザートには柿や剥き栗・栗きんとんがおすすめです。
お月見に合わせる小物
◆うさぎの小物
お月見といえば、うさぎ。「月の模様は、うさぎが餅をついている様子だよ」と幼少期に教えてもらった人も多いかもしれません。そんなうさぎにちなんで、花や食事と一緒にうさぎの小物も飾ってみましょう。
◆和紙
花を生けた花瓶の下や食器の下に、和紙(千代紙)を敷いて飾ってみましょう。和の雰囲気をグッと引き上げ、花や食事を引き立ててくれます。
一年で最も美しい月。その光に照らされる花をたのしんで。
もともとお月見は、日本の伝統的で素敵な行事。
と言っても、つい毎年「あ、そういえば今日はお月見の日か〜」と、ひと目見るだけで終わってしまう方も多いのではないかと思います。今年のお月見は、ぜひ月明かりに照らされるお花の美しさと、収穫の感謝を味わえる食事を一緒に、「一年で最も美しい名月」を楽しんでみてくださいね。