“Cats are connoisseurs of comfort.” 〜猫は快適さの鑑定士である〜
という言葉があります。ネコと暮らすということは、いかに「快適な空間をつくり上げる」か。イヌと違って単独行動を好み、誰に対しても自由気ままに振る舞うネコ。彼らとの暮らしは一体どんな日々なのでしょうか。
連載第3回目の今回は、猫用ナチュラルフードなどを扱うブランド「ラシャトン」の代表・新井ミホさんと、トラネコ3兄弟の暮らしを拝見してきました。
MOKUJI
ネコ:グリくん(6歳)・キジトラ・弟思いの長男タイプ。写真を撮られるのが好き。ラヴくん(4歳)・キジトラ・めったに怒らない平和主義。ちょっと人見知り。 ゆきくん(6カ月)・キジシロ・お兄ちゃん大好きの甘えん坊
家主:新井ミホさん・猫ブランド「ラシャトン」代表・趣味は猫と筋トレと三点倒立
おうち:100平米・2LDK・渋谷区
3匹との出会い
—グリくんは取材スタッフに興味津々の様子ですが、ラヴくんとゆきくんはなかなか姿を見せてくれませんね。
「ラヴとゆきは人見知りなので、今日はずっと奥の部屋のクローゼットに隠れているかもしれません。逆にお兄ちゃんのグリは人に興味があって自分の写真を撮られることが好きなので、弟たちの分までモデル役を頑張ってくれると思います(笑)」
—3匹のネコちゃんとはどうやって出会ったのですか?
「グリに出会ったのは、13年間ずっと一緒に暮らしていた先代のネコが亡くなった直後でした。当時は家に帰ると涙が止まらなくなるくらいのペットロスに陥っていたのですが、ある日猫愛好家の先輩から「生後1カ月くらいの子猫を拾ったから暮らしてみない?」という連絡をいただいて。なんだか運命的な縁を感じて、まだ会ってもいないのに「飼います!」と即答しました(笑)。
その後しばらく2人で生活をしていたある日、美容業界の友人の家で子猫が5匹生まれまして。「もう1匹飼いたかったらどうぞ」と言われて見に行ったら、グリとよく似たキジトラのラヴがいたんです。いい兄弟になれるかもしれないと思って、譲り受けることに。最初は警戒していたグリでしたが、3日目には2匹がビックリするほど仲良しになって、今では本当の兄弟のようです」
—3匹目のゆきくんは保護ネコを引き取られたんですよね?
「2016年に『ラシャトン』を立ち上げてから半年に一度くらいのペースでチャリティイベントを開催して、参加者の方々に保護猫を取り巻く状況をお知らせしたり、保護活動をされている団体さんへの寄付を行ってきました。
そんななかで、私自身も『自分にできることをしていきたい』という気持ちがますます強くなり、保護ネコだったゆきの里親になることを決断しました」
グリくん・ラヴくん・ゆきくんとの「暮らしぶり」
お気に入りの場所
「午前中は私の仕事部屋で日なたぼっこをしていて、午後はリビングの日当たりが良いので、猫用のハンモックでくつろいでいることが多いです。どうやら3匹とも、私が仕事に行っている昼間はほとんど寝ているようです(笑)。帰ってくるとみんなで玄関まで迎えに来てくれて、夜はリビングで3匹が集まって、遊んだりネコ会議をしています。
私自身はリビングの椅子に座ることが多くて、基本的にずっとネコたちの様子を見ていたり、話しかけています」
この物件に住み始めたキッカケ
「もともとこの街が好きで、会社からも近かったことが大きいです。
ネコが上下運動できるスペースを作れれば広さは重要ではないと思っていますが、たまたまリビングが広いので、3匹が楽しそうに追いかけっこをしている姿を見ると、この部屋に決めて良かったなと思います」
家具・インテリアはお気に入りを選ぶ
—お部屋を見渡すと、グラスや瓶、陶器の置物など、割れ物が多いですね。ネコちゃんたちにいたずらされないですか?
「やっぱり、遊びに熱中して“不慮の事故”を起こしてしまうこともありますよ(笑)。あとグリくんは子供のころ、私の気を引くためにわざとモノを落とすなんてこともありましたが、大人になり自然とそれもなくなりました。
ストレスがいたずらの原因になると思うので、日頃から積極的に話しかけたり遊んであげるなどコミュニケーションを深めることを大切にしています。だから、ネコのために自分が置きたいものをガマンしている感覚はありませんね」
—愛猫家がセンシティブに考えがちな植物も部屋にたくさんありますね。
「私はグリーンが大好きですし、季節を問わず部屋にお花や植物を絶やさないようにしています。でも、お花や植物には危険な毒が含まれているものもあり、誤飲させないためにも飼い主が猫にとって何が有害か知っておくことが大切です。
私は長年ネコと一緒に暮らしてきて感じているのは、彼らはむやみにお花や植物を食べるような生き物ではないんですよね。ネコたちの心と体が健全でいられるように気を配っていれば、植物を置くことを怖がらなくても大丈夫だと思っています。
ただ、万が一のことを考えて猫にNGなお花や植物は避けたり、自分の目が届かない場所には置かないなどの配慮と責任は大切です」
—植物や家具をおもちゃ代わりにしないために工夫していることは?
「実は我が家にはそこらじゅうに爪とぎがあるんですよ。私が家に帰ったときなど、みんなテンションが上がるとガリガリしがちなので、それぞれが衝動的に行きがちなポジションに置いています。爪とぎも最近ではインテリアに溶け込むおしゃれなものが多くあります。リビングに敷いているマットも、引っかかれても劣化しにくい材質のものを選んでいます」
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ネコと暮らすうえで気をつけていること
ベタベタと触りすぎない
「ステイホーム期間中は私のスキンシップが過剰すぎて、グラやラヴにうんざりされたかもしれません(笑)。一方で末っ子のゆきは我が家に来る前に人間に良い思い出がないので、まだ私にも完全には懐いていないのですが、我が家に来て1カ月で表情も態度も変化して甘えっ子になりつつあります。焦らずに信頼関係を築いていきたいなと。
やっぱりベタベタと近づくことがネコにとってハッピーとは限らないので、それぞれの性格や特徴をちゃんと把握して向き合うことを大切にしていきたいですね」
「出したらしまう」が大原則
—3匹と同居するとどうしてもお部屋が散らかりやすいと思いますが、片付けのルールはありますか?
「当たり前ですが、ご飯類もおもちゃも『出したらしまう』ことが一番大切!
ですから、ついつい出しっぱなしにならないように、ちゃんとモノの収納場所を決めて、そこにしまうようにしています。そして、入らないモノは買わないようにします。毎日必ず掃除機をかけようと義務化すると負担に感じてしまうので、掃除に関してはルールを設けず、週2〜3回くらい掃除機やコロコロをやるようにして清潔な状態をキープしています」
猫との共同生活を始めたい人へのアドバイス
ーひとり暮らしの女性に猫ちゃんとの共同生活はおすすめですか?
「猫ちゃんでも、ワンちゃんでも、動物と一緒に暮らすことは絶対的にオススメです。
人間同士でのコミュニケーションでも幸せは得られますが、やっぱりペットは無償の愛情をもたらしてくれる存在です。たくさんの優しさをもらえるし、自分も優しい人間になれると思います。将来的な介護も含めて覚悟を持つ必要がありますが、それでも前向きに飼ってみたいと思うなら、ぜひアクションを起こしてほしいです。
ペットショップで出会ったり、ブリーダーさんに紹介してもらったり、私のように保護ネコを引き取ったり、今はさまざまな選択肢があることを知ってもらえたら嬉しいですね」
ネコと暮らすうえでのMy3ヶ条
その1 たくさん話しかける
その2 よく見る。行動法則を把握する
その3 お互いの自由を尊重する
「ネコは人間の言葉を理解すると信じて、とにかく話しかけています。スキンシップは猫によって好き嫌いがあるのでほどほどに。
お互いに暮らしやすい環境を作るために、コミュニケーションを怠らずにネコたちの気持ちを汲み取れるようにしたいですね」
新井さんが手がける猫ブランド「ラシャトン」のアイテムたち。どれも猫と人の暮らしを豊かにするものばかりです。http://www.lachaton.jp
おわりに
血の繋がっていないオスのネコが3匹も同居したら、熾烈な縄張り争いが巻き起こってもおかしくないもの。新井家の平和が保たれているのは、ママ役のミホさんがそれぞれの性格に合わせた接し方を熟知しているから。
ネコと暮らす日々。そこにはたくさんの“愛情”と“気づき”が詰まっているのです。
Photo_Takumi Shinoda(go relax E more) Interview & Text_Satoshi Asahara Edit_Yasushi Shinohara
IT関連企業の広報や化粧品会社PRを経験した後、独立。オーガニック化粧品を中心としたフリーランスPRを経て、2012年にナチュラル&オーガニックライフ専門のPR会社、株式会社ラ キャルプを設立。オーガニックコスメ&フード、マクロビオティック、薬膳、フレグランスブランド、クリニックなどのブランディングやPRコンサルティング業務に携わる。2016年、猫ブランド「ラシャトン」立ち上げ。
新井ミホ
@mihoarai0527