いつ見ても素敵な装いで、センスがあって、目を引く人っていますよね。
「どんな部屋で、どんな暮らしをしているんだろう?」と気になるけれど、なかなか日常生活までは知ることができないもの。
そこで本連載では、おしゃれな人の住む部屋と暮らしぶりから、その人の魅力と工夫に迫ります。
第2回の今回は、レタリングアーティストやバーのオーナーとして、エネルギッシュに活躍する井澤卓さんのお宅を拝見。
MOKUJI
家主:井澤卓さん
年齢:32歳
職業:レタリングアーティスト、バー経営
広さ:43平米
間取り:1ルーム
エリア:中目黒
部屋のお気に入りやこだわった場所
今から2年前に、築20年の中古マンションを購入。都会にありながらも空が仰げるマンションをリノベーションし、気ままなひとり暮らしを始めた井澤さん。そのこだわりは、多岐にわたっています。
一段高くしたベッドスペース
「僕は国内・国外関係なくホテルに滞在することが好きなんですが、この部屋もホテルのような、誰もがくつろげる空間にしたいと、そう思っていました。そこで考えたのが、ベッドを置くスペースを一段高くする、ということ。
階段2段分でも高さが変わるだけで、面白いくらいに空間が分かれるんです。頭のスイッチのON/OFFが、この段差によって切り替わる感覚ですね。目が覚めて部屋を見渡すと旅行の朝のようにシャキッとします」
「1ルームである以上、すべての場所が遊びに来た人に見られる空間。なので、手は抜きたくなかったんです。思った以上にかっこよく仕上がったので、満足しています」
仕事もしやすいダイニングテーブル
食卓と仕事机を兼ねるダイニングテーブルは、井澤さん自身が制作されたものだそう。
「手頃な大きさの板を探し、そこに脚を取り付けただけの簡易なテーブルですが、シンプルに使いやすいのがポイント。
家にいるときは、ほぼこの机の前にいる気がします。ひと息ついて目線を上げるとウッドデッキの先にある空が見えるのもお気に入りです」
座るも寝転がるも自在のソファー
ニトリで購入したソファーも、実はお気に入りの場所だという井澤さん。
「ブランドに関わらず、考えていた用途に合ったソファを幅広く探した結果これに辿り着きました。
たっぷりとしたサイズ感で足を伸ばしてくつろげるし、ソファーベッドなので友人が来たらここに寝てもらうこともできるんですよ」
都会のオアシス的ウッドデッキ
「リノベーションをするとき、ルーフバルコニーにウッドデッキと目隠し代わりの壁を作ったんです。日差しが心地良い季節は、友人たちとここでお酒を飲んで語り合うことも。
もともとはごく普通のバルコニーって感じだったんですが、ウッドデッキにすることで雰囲気が格段に上がりました」
部屋の中から見える場所だからこそ、部屋以上にこだわったのだと井澤さん。
今ではここが仲間との”オアシス”になっているようです。
まるで作り付けのようなクローゼット
「ミニマルな、北欧っぽいイメージでオーダーした」というクローゼット。
柱や壁に馴染むよう、サイドを白くしてもらったことがポイントなのだとか。
「部屋の中にあっても邪魔にならず、まるで昔からそこにあるように存在する。これもオーダー家具の魅力だと思っています。
手作りのものって、すべてにストーリーがあるんですよね。そうしたひとつひとつを、遊びに来てくれた人に話すことから、会話が広がったりもするんです」
友達の作品や自作のアートたち
井澤さんのお部屋で目につくのは、さまざまなフレームに収められた、たくさんのアート作品。
「自分で作ったものもありますが、主に友達の作品を飾っています。僕の部屋というスペースを通じて、訪れた人にこんなアーティストがいる、ということを紹介できる部屋にしたかったんです」
ヘリンボーンの床
「木目調のシートや、質の悪い木材でごまかすのはイヤだったんですよね」
そう語る井澤さんにとって、部屋づくりで重要視したのが、ヘリンボーンの床。
「無垢材のヘリンボーンは、絶対に譲れないポイントでした。細かい作業になるため職人さん泣かせだったようですが、手間をかけてもらった分、居心地の良さがぐんと高まりました」
部屋のコンセプト
「どんな部屋にするかプランを練ったとき譲れなかった点。それは作り手の想いというか、そういうのが見える部屋にしたかったことですね」
クローゼットのお話を伺ったとき「手作りのものにはストーリーがある」と語った井澤さん。「物語がある」「想いが見える」、そういう部屋は訪れた人の興味を惹いて“退屈させない”という魅力があると井澤さんは語ります。
来る人を飽きさせない部屋づくり
「将来ホテルを経営するのが夢で、国内外のホテルを泊まり歩いているんです。ホテルの空間で滞在するのが好きなので、生活空間である自分の部屋もホテルのようにしたいなって思いました」
ホテルライクな部屋づくりは、バスルーム周辺でも行われていました。
「タオルひとつも積み重ねて終わりではなく、ホテルのように“魅せる”収納をする。これだけで部屋の雰囲気は格段によくなるんです」
この部屋に住んで変わったこと
「会社員時代は部屋にいることも少なかったので、荒れたまま過ごすこともありました」
そんな井澤さんに変化をもたらしたのも、この部屋に住み始めてからだったといいます。
まず始めたのは、好きなものだけを置く、ということ。
好きなものだけを置くことで生まれた自然なモチベーション
「インテリアに無頓着な人って、すごく多いじゃないですか。でも、ひとつずつお気に入りのものを部屋に置いていき、好きな物だけに囲まれる生活を送っていると、不思議と気持ちが満ちていくんです。そうして自分自身が充実していくと、仕事やプライベートに対しての意欲もあふれてくるんですよ」
バルコニーや部屋に並んだグリーンたちも、井澤さんが好んで集めたもの。なかなか気に入ったものがないからと、植木鉢に自分で色を付けて楽しんでいるといいます。
「部屋に生きものがいるっていうのも、それだけでパワーをもらえる気がするんですよね」
日々の暮らしで工夫していること
オーダーメイドのクローゼットと、ベッドエリアの下段につくられた大きな引き出し。それ以外はこれといった収納がない井澤さんの部屋。
しかしこれは、”あえて狙った”ものなのだとか。
あえて収納のない部屋づくり
「収納スペースがたくさんあると、とりあえずしまっておけばいい、という甘えが生まれると思うんです。僕はもともと断捨離的なことが得意ではないので、収納がないから目につくところにものを置く分、整理整頓と美しく見せることを心掛けることにしています」
部屋の中に必要のないものを置かなくなったことで、部屋がすっきりしたという井澤さん。同時に、余白のある部屋作りも心掛けているのだとか。
「リノベーションするとき、壁をできるだけ取り払ってもらったのはこのため。空間に余裕をもたせることで、精神的な余裕も出てくる。
それと洗剤やティッシュのような生活用品をそのまま置かない、というのもポイントかもしれません。デザイン性のないボトルものは、気に入ったデザインのボトルに入れ替える。ティッシュペーパーも箱のまま置かない。
少しだけ手間はかかりますが、その分だけ自分が好きな部屋に近づけます」
自分らしく暮らせる部屋の3ヶ条
その1 好きなもの”だけ”を置く
その2 来た人が楽しめる部屋をつくる
その3 自分が「好き」と思える部屋にする
この部屋に住むまで「家で仕事をすることが好きじゃなかった」という井澤さん。今では、この部屋が井澤さんにとってマストな仕事場であり、憩いの場であるといいます。
「本や雑誌を読んだり、お風呂に入ったり…そういう生活のひとつひとつが、『楽しい!うれしい!』と思えるようになったのは、この部屋のおかげですね。
空間的に開放感があって、好きなものに囲まれているから、居心地は最高にいいです」
おわりに
広く視界の開けた部屋いっぱいに、好きなものだけをレイアウトした井澤さんの部屋。
自分や遊びに来る人を楽しませる、もてなしのデザインでいっぱいの空間はとても魅力的でした。
あなたはどんな部屋で、どんな暮らしを送りますか?
Photo_Kohji Kanatani Interview & Text_Megumi Waguri Edit_Yasushi Shinohara