あなたには「人生を終えるまで使う」と自負があるアイテム=一生モノはありますか?
長い人生をかけて愛用するアイテムとはいったいどういうモノなのでしょうか?
今回は各界のくらし上手な3人に、一生モノとその理由について迫りました!そこにはそれぞれの生活へのこだわりが隠れていました。
MOKUJI
「『Perceval』のナイフシリーズ」鈴木純子さん(アタッシェ・ドゥ・プレス)
1人目はライフスタイルブランドのPRやブランディングを手掛ける鈴木純子さん。
自宅のインテリアやくらしぶりがたびたびメディアに取り上げられる彼女が一生モノと決めた『Perceval』のナイフとは?
『Perceval』のナイフとの出合いは?
「パリのビストロでした。細部まで手の込んだ機能美にまず魅了され、肉汁が出ない切れ味にビックリ!
カトラリーも料理の一部で、カラトリー次第でこうも変わるのかと実感させられたことを覚えていますね」
使い心地は?どこを気に入っていますか?
「柄のバリエーションが多くて、樹脂製や天然木など気分に応じて使い分けています。
フランス・オーヴェルニュで2015年に使われたワイン樽を柄に再利用したシリーズを最近コレクションに追加しましたが、ワイン色が染み込んでいたり、ストーリーを感じて、使うたびに心がときめくんです」
「一生モノだな」と感じた理由は?
「自宅での食事でほぼ毎回使っているんですが、お肉はもちろん、野菜などの柔らかいものも崩れない切れ味に、これ以外のナイフの購入を考えられないほど気に入っています」
30年後はどのように使っていたいですか?
「少しずつコレクションは増えるかもしれません。でも、毎日のように変わらず使っているのだと思います。
経年変化するものが好きで、タイムレスな魅力があるものは、時には自分の一生を超えて生き続けていきます。そのなかに自分が使った証が刻まれていくことが、長くものと付き合う魅力だと考えています」
一生モノなアイテムと出合うコツは?
「自分が何を好きか、自分を知ることではないでしょうか。
そうすることで、世代や国を超えて長く付き合いたいと思えるアイテムに出合えると思います」
鈴木純子さん
家電ブランド『アマダナ』を経て独立。現在は、老舗だしブランド『やいづ善八』や今治の『藤高タオル』など国内外のライフスタイルブランドのPRを担当するアタッシェ・ドゥ・プレス。フランスの自然派ワインの生産者めぐりはライフワークとなっている。Instagram: suzujun_ark
「ジョージアで買った絨毯」林紗代香さん(『TRANSIT』編集長)
続いて2人目はトラベルカルチャー雑誌『TRANSIT』の編集長を務める林紗代香さん。
世界の旅や文化の魅力を誌面に詰め込む林さんが見染めた、一生モノなアイテムはジョージアで買った絨毯でした。
ジョージアで買ったという絨毯との出合いは?
「昨年旅したジョージア(ヨーロッパとアジアの間に位置する国)の首都・トビリシの旧市街にあるカーペット店で購入しました。
すでに絨毯はいくつか持っていたので、気に入ったものがあったら購入しようかなとゆるりと思っていたのですが、ぎっしりと陳列された絨毯やキリムのなかに象形文字みたいな山の動物たちが愛らしい織り目に止まりました。
パステルグリーンやピンクのような独特の色使い(しかも草木染めとのこと)も珍しくて、買わずにはいられませんでしたね」
使い心地は?どこを気に入っていますか?
「これまでは寝室には藍色系のオールドキリムを使用していたのですが、家で過ごすことが多くなり、気分を変えるために春に今の絨毯に模様替えをしました。
『この鳥はクジャクかな、これはオオカミ!?この絵はラクダっぽい。いやいや、ラクダなんてジョージアの山奥にいないよなぁ』なんて絨毯を織った人のチャーミングさに感心しながら妄想しています(笑)」
「一生モノだな」と感じた理由は?
「購入するときに、ジョージアの山岳部・トゥシェティ地方で4〜50年前に作られた絨毯だと教わりました。世界的に伝統的な手仕事の担い手は減っているし、こういった草木染めの絨毯は今後は作られないだろうから、とても希少価値の高いものだと感じています。
それと、絨毯の柄や色は職人さんのセンスによるところが大きいので、ふたつとして同じものがないところも一生モノと感じる理由ですね」
30年後はどのように使っていたいですか?
「絨毯やキリムは古ければ古いほど価値があるといわれていますが、コレクターではないし、ただ寝かせるだけなのはもったいない。
きちんと手入れをしつつ、今のように日常使いをしたいです」
一生モノなアイテムと出合うコツは?
「古いものやアンティークに惹かれがちな私が、ある旅でソウルの骨董街で古い器を探していたところ、目に止まったのは利川(韓国で陶芸が盛んな地域)の新しいお茶碗でした。
購入をためらっていたところ、店の老夫婦に『あなたまだ若いんだから、大切に使い続ければ、これが骨董になるのよ』といわれたことがとても目からウロコで。そのお茶碗は毎日大切に使っています。
つまり、どう出合うかというより、自分が気に入ったアイテムをまさに生涯をかけて一生モノとして付き合っていくかだと思います」
林紗代香さん
いくつかの雑誌編集部勤務を経て、現在は旅行好きに深く愛されるトラベルカルチャー雑誌『TRANSIT』の編集長。イベントの登壇や司会を務めることも。『TRANSIT』48号 〜美しき古代文明への旅〜 が好評発売中。http://www.transit.ne.jp
「『イームズ』のアームシェルチェア」中島潮里さん(美容師)
3人目は作り上げるヘアはもちろん、自身のファッションやライフスタイルも多くのファンを持つ美容師・中島潮里さん。
毎日のように愛用するアイテムは、彼女の髪色と同じオレンジが眩いイームズチェアでした。
イームズチェアとの出合いは?
「『KINFOLK』など海外のインテリア雑誌やライフスタイル雑誌で見かけて気になっていました。
ずっとパートナーと欲しいと話していたものなので、オークションに出品されていたときは『見つけたー!』という感じでしたね(笑)」
使い心地は?どこを気に入っていますか?
「リビングに置いていて、毎日のように使っています。仕事がある日は朝と夜に。お休みの日はとりあえず、朝から日課のように腰かけていますね。
ロッキンチェアーだから揺れるのですごくリラックスできます。カラーも手触りもデザインもすごく私好みです」
「一生モノだな」と感じた理由は?
「そもそも物を捨てないようにしていて、一生使うを前提にしてアイテムを選んでいます」
30年後はどのように使っていたいですか?
きっと今の家には住んでいないと思うので、そのときのマイホームに合わせて置きたいですね」
一生モノなアイテムと出合うコツは?
「私は普段の生活でもサロンワークでも、自然由来のものや再生可能なものを使って、極力地球に負担をかけないようにしています。
だから椅子ひとつとっても、同じものを使い続けることはとても大切だと思っています。すぐに新しいものを欲しがるのではなく、あるものを愛して使う。インテリアでもファッションでも何にでもいえることではないでしょうか。
それと、素材は必ず確認するようにしていますね。チープなものだとすぐに壊れてしまったり、長く一生モノとして使うことができないと思うので」
中島潮里さん
「ヴィーガン・ビューティー」をコンセプトに掲げる人気美容院『whyte』のトップスタイリスト。サロンワーク以外にもサスティナブルアンバサダーとして地球に優しく美しいライフスタイルが多くの女性から好評を得る存在。Instagram:whyte_shiori
Text & Edit_Yasushi Shinohara